映画館で見てよかった聲の形。「BGM」と「音」に対する拘り

先日8月25日にNHK Eテレで聲の形が放送されました。
「君の名は」と上映期間が被ったこと、「内容がシビア」であることから、埋もれた名作感が強い作品でしたが、今回の放送で注目を浴びたことは嬉しかったです。

また、NHKによる放送だったので、CMなしのノンストップ放送だったことも最高でした。CMを挟むことで繊細な世界観に水を差すのはやっぱり許せませんので。

私はこの作品が大好きなので、何度見ても飽きません。ただ、テレビやブルーレイで聲の形を視聴するたび、「映画館で見てよかった」と思うのです。

映画館でしか体験できない音

聲の形は淡々とストーリーが展開していきますが、実は「BGM」と「音」に強い拘りのある作品です。

まず、ところどころで流れる牛尾憲輔さんによる美しい音楽が素晴らしいです。

聲の形 BGM

出典:koenokatachi-movie.com/

 

聲の形の劇中BGMはピアノ主体の繊細な曲が多いです。世界観にマッチした優しくも切ないBGMは「しっとりとした気分」になりたいときに聴きたくなります。

ただ、この素晴らしいBGMの数々はテレビのスピーカーで視聴してしまうと存在感が薄れてしまいます。

映画作品における音楽・BGMは作品の世界観を作り上げる非常に重要な存在なのですが、残念なことに一般的なテレビのスピーカーだと、重要な音域が消えてしまったり、最悪BGM自体が聞こえなくなってしまいます。

その結果、

BGMの存在が弱くなると、結果的に世界観へ没入しにくくなってしまうのです。

特に聲の形のようなピアノ曲主体の作品はそれが顕著であり、致命的な問題となります。

激しいアクションじゃないとわざわざ映画館に見に行く必要がないと思われている方も大勢いますが、繊細で淡々と進む作品こそ実は映画館で見る必要性があります。

雑音を含んだサラウンド音楽

映画館の音響はサラウンド音響です。

一般的なテレビのスピーカーから流れるのはL/Rの2ch音楽ですが、映画館の音楽はセリフが中央、BGMが正面L/R、環境音等が後ろリアスピーカーから流れるマルチチャンネル音楽です。

専門的なサラウンド音響に関する話題は一先ず避けますが、聲の形は映画館で見るとサラウンド音響で楽しめるというメリットがありました。

補聴器越しの音を再現したノイズ付きBGM

聲の形のBGMは硝子が実際に耳にしている音に焦点を当てられています。

硝子が実際に耳にしている音とは、つまり作中でも度々登場する「補聴器」を通して聴こえる音の事です。

補聴器は音を増幅させるアンプ機能を含んだ機械ですので様々な音を拾います。
また、人の声が認識できるレベルまで音を拾うと、それに伴い雑音も増幅されます。

例えば車の音、風の音、教科書をめくる音。様々な音が増幅されるわけです。

そして、この補聴器の特性をBGMに取り入れようと考えた山田監督と牛尾憲輔さんは「分解してマイクを仕込んだアップライトピアノ」を録音用の楽器として使用しました。

マイクが取り入れられたアップライトピアノはペダルを踏む音や鍵盤をはじく音といった雑音も録音されます。普通の作品なら雑音はノイズとして捉えられて消されますが、聲の形に関しては敢えて雑音がそのまま生かされたBGMとなっています

改めてBGMに注目して作品を見てみると、BGMに雑音が含まれているのがわかるはずです。
よく耳を凝らわないと分からないほど自然に馴染んだ雑音。この雑音こそが聲の形の世界観を構築しています。

サラウンド音響であるからこそ、そして映画館という大スクリーンであるからこそ、聲の形の世界は完成するのです。

映画館で見るからこそのラストシーン

聲の形のラストシーン。映画を見た人ならあのシーンの素晴らしさは分かると思います。
私も映画館であのシーンを見た時は大号泣してしまったわけですが、先日テレビで見た時はあの凄まじい感動を感じることができませんでした。

もちろん初見でないことは少なからず影響したでしょう。

しかし、映画館の大スクリーンでなかったこと、そしてやはり拘り抜かれたBGM・音が自宅だと埋もれてしまうことが感動を減らす大きな原因だと感じました。

当たり前といえば当たり前ですが、やはり興味のある作品は映画館で見ることが重要だと改めて思い知りました。作品に対する思い入れ、感動がまるで違います。

最後に

聲の形は10代・20代のみならず全ての人に見て欲しい作品であり、私の大好きな作品です。
ただ、もし映画館で見ていなかったら、ここまで好きになっていなかったでしょう。
繊細で美しいBGM。硝子の聴こえる音を表現したノイズを含んだ音。ラストシーンの凄まじい臨場感。
これらはブルーレイ視聴やテレビ視聴では決して味わうことができない映画館ならではの特権です。

映像作品において「音」「BGM」が持つ影響は計り知れません。映像作品を最大限に楽しむならば、やはり映画館に見にいくことはとても大切です。

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