【レポート】カポラレ&オチャンド主催 ヴァイオリン展示会

先日六本木森ビルで行われたストラディヴァリ展に続き、今回は知る人ぞ知る弦楽器専門店「カポラレ&オチャンド」主催のイタリアンヴァイオリン展示会にいってきました。

このイベントでは1700年前後につくられたオールド楽器が展示され、ストラディヴァリ・デルジェスといった名器を生で見ることができる貴重な体験ができます。

展示本数は十数本ですが、その分ジックリ一つ一つの楽器を見ることができたので、満足度が非常に高かったです。

ヴァイオリン展示会

カポラレ&オチャンド主催 ヴァイオリン展示会

この展示会はカポラレ&オチャンドとして第二回目のヴァイオリン展示会の開催です。

開催期間は2018年11月21日(水)〜23日(金・祝)の間の三日間。場所は三井住友銀行東館ライジングスクエア 1階アース・ガーデンで行われました。

三井住友銀行 ライジングスクエア

https://www.rising-square.jp/floor01.html

アース・ガーデンは天井が高く、音も良く響くので、小規模コンサートにも適した会場だと思います。また、開放的な館内なので居心地が良いのも嬉しいポイントです。

なお、有料であったストラディヴァリ展に対してカポラレ&オチャンドのヴァイオリン展示会は入場料が無料。イベントの存在を知らない方が多かったので、自分のペースでじっくりとヴァイオリンを観察することができました。

弦楽器製作者であれば行って損はないイベント

弦楽器製作者にとって実物のオールド楽器を見るのはいい経験です。

アウトラインやスクロールの形、f字孔、ニスの色。さらには製作年や作者、国、地名。楽器には一つ一つ異なる個性があり、その細かな個性は実物を見なければわかりません。

数十億もするストラディヴァリを実際に見る機会は日本では滅多になく、先日のストラディヴァリ展や今回の展示会のような機会は逃さず参加した方がいいです。

ストラディヴァリ 展示会

左:ストラディヴァリ「トルティーニ」 右:ストラディヴァリ「ナチェス」

貴重なオールド楽器の演奏を生で聴ける!

このイベントの贅沢なところが、ストラディヴァリやデルジェスといった貴重なオールド楽器の生音を間近で聴けるところです。
ストラディヴァリ展でもオールド楽器の演奏を聴くことができましたが、音響はアース・ガーデンの方が良く、人も少なかったこともあり、より楽器の個性を味わうことができました。

私がイベントに訪れたのは最終日の23日でしたが、この日はパコオチャンド氏によるストラディヴァリのチェロの演奏、ヴァイオリニスト成田達成さんによるストラディヴァリ・デルジェスの演奏が聴けました。

どちらの演奏も素晴らしかったのですが、特に現存数が少ないストラディヴァリ チェロの音色を、10人ほどの少人数でじっくり聴けたのは本当にいい体験だったと思います。

ヴァイオリン展示会 ストラディヴァリ

チェロ演奏は11時半〜だったから人がまだ少なかった

また、14時からは成田達輝さんによるヴァイオリン音色の聴き比べが行われ、6本のオールド楽器の個性を【同じ曲】によって比較してくれました。

他のイベントでもオールド楽器による演奏を聴ける機会はありますが、やはり【同じ曲】で聴き比べを行うことで「個性」をハッキリ感じることができます。

ヴァイオリン展示会 ストラディヴァリ

左:主催 パコ・オチャンドさん 右:ヴァイオリン演奏家 成田達輝さん

楽器は一つ一つ異なる個性を持ちますが、ストラディヴァリに関してはそれが顕著です。成田達輝さんが持つストラディヴァリ(1711年製 “Tartini トルティーニ”)は繊細で美しい音を奏でるストラディヴァリですが、今回聴き比べで演奏してくれたストラディヴァリ(1716年製 “nachez ナチェス”)は力強さを特徴とする楽器です。

今回の聴き比べで最も印象に残ったのは、成田さんが持ち込んでくれた「トルティーニ」だったのですが、それはやはり成田達輝さんが「トルティーニ」を使いこなしていたからこそ、より良く聴こえたのだと思います。

ヴァイオリン展示会 ストラディヴァリ

楽器には楽器特有の個性があるため、その楽器の魅力を引き立たせるためには「使い続けて自分のモノ」にしなくてはなりません。

自分に合う革靴をえらんで、徐々に馴染ませていく感覚と似ているとも言われます。

また、成田さんは「敢えて普段とは違う楽器を選ぶことで楽器から様々なことを学べる」とも語っていました。

この言葉は弦楽器製作の楽しさと奥の深さを強く感じる一言だと思います。

展示されていたヴァイオリン一覧

アントニオ・ストラディヴァリ 1716年製 ナチェス

アントニオ・ストラディヴァリ 1716年製 ナチェス

オールドヴァイオリンといえば、ストラディヴァリはやはり欠かせません。

この「ナチェス」はストラディヴァリが残した数ある作品の中でも、とりわけ名器として知られる作品です。美しいグランドパターンで作られており、見るもの全てを魅了します。

アントニオ・ストラディヴァリ 1716年製 ナチェス

裏板は2枚板。杢目は中幅の太さで下方向に伸びています。保存状態も極めてよく、非常に美しいです。

アントニオ・ストラディヴァリ 1667年製 ジェンキンス

アントニオ・ストラディヴァリ 1716年製 ジェンキンス

「ジェンキンス」はストラディヴァリの初期の作品です。この頃はまだ師匠であるニコロ・アマティの影響が色濃く残っています。

ちなみに「ジェンキンス」という名前は1947年にイギリスのヴァイオリニスト、トム・ジェンキンスの手に渡ったことから名付けられたようです。

アントニオ・ストラディヴァリ 1667年製 ジェンキンス

裏板は1枚板。杢目は絵画のようにややぼやっとした印象を受けます。

ジュゼッペ・ガルネリ・デルジェス 1730年製

ジュゼッペ・ガルネリ・デルジェス 1730年製

デルジェスはストラディヴァリと双璧をなす名器です。音響的に力強いことが楽器の特徴であり、ホールの端から端まで音色を響かせることができます。

ただ、楽器そのものの個性が強いストラディヴァリに対して、デルジェスは演奏者によってそのパフォーマンスが左右されるともいわれており、上級者やソリスト向きと楽器であるといえます。

ジュゼッペ・ガルネリ・デルジェス 1730年製

裏板は2枚板です。杢目は細かく、下の方に向かうほど独特な味を見せます。

ヨハネス・バティスタ・ガダニーニ 1763年製

ヨハネス・バティスタ・ガダニーニ 1763年製

かなりマニアックな方でなければガダニーニという名をご存知ないかもしれません。ガダニーニは高価な価値がついているヴァイオリン製作者としては5本の指に入る人物であり、主にトリノやミラノにて数多くの名作を作り上げました。

ストラディヴァリの弟子であったともいわれていますが、それが本当であったのかは今や誰も知りません。

ヨハネス・バティスタ・ガダニーニ 1763年製

裏板は2枚板。杢目は細幅で真横に伸びています。中幅の方が人気といえば人気ですが、細幅も繊細な感じがして良いですね。

アンドレア・ガルネリ 1638年製

アンドレア・ガルネリ 1638年製

アンドレア・ガルネリはガルネリ一族の創業者として知られています。このモデルはストラディヴァリと共にニコロ・アマティの弟子として働いていた時に製作された作品であり、彼が10代の時に製作した作品です。

アンドレア・ガルネリ 1638年製

裏板は1枚板。1960年代の作品でありながらも保存状態がかなり良いです。左側の方が杢目がくっきりしています。

カルロ・フェルディナンド・ランドルフィ 1750年製

カルロ・フェルディナンド・ランドルフィ 1750年製

カルロ・フェルナンド・ランドルフィはガルネリの弟子だったとされている人物です。確かにf字孔の雰囲気はストラディヴァリよりもガルネリ一族に近い気がします。

ただ、弟子であった証拠は残っていないため、知る人ぞ知るヴァイオリン製作家といったところでしょうか。

ジュゼッペ・アントニオ・ロッカ 1853年製

ジュゼッペ・アントニオ・ロッカ 1853年製

ジュゼッペ・アントニオ・ロッカというヴァイオリン製作家の作品。正直余程のマニアでもなければその名を知る人はいないでしょう。もちろん私も知りませんでした。

ニスの色が他の作品よりも明るめなとなっています。

ジュゼッペ・アントニオ・ロッカ 1853年製

ジュゼッペ・アントニオ・ロッカは貧しい生活を送っていたため、作品の材質にあまり良いものを使えなかったらしいです。やや杢目に統一感がないのはそのせいなのでしょう。

ただ、音質的には優れているようで、キャリア終盤には高い評価を獲得したとか。

ジョバンニ・グランチーノ 1690年製

ジョバンニ・グランチーノ 1690年製

ミラノ派の製作家として高い評価を獲得していたジョバンニ・グランチーノの作品。今回展示されているヴァイオリンの中では最もf字孔が中央に寄っています。

この時代の製作者として絶大の影響力を誇っていたニコロ・アマティ(ストラディヴァリ)の作品に大きな影響を受けた作品です。

ジョバンニ・グランチーノ 1690年製

裏板は2枚板。古い作品なので、キズや痛みがあります。また、道具が現代よりも性能が悪かったせいかアンバランスさが目立つ印象です。

複数のオールドヴァイオリンを見比べると、ストラディヴァリ「ナチェス」の保存状態の良さがわかります。

デビッド・テクラー 1723年製

デビッド・テクラー 1723年製

一目見て独特な雰囲気があるとわかるデビッド・テクラーの作品。指板とf字孔の位置がかなり離れているため、違和感がすごいです。

オーストリア出身の製作者らしく、同地の影響を強く受けているとされています。

その他 モダンヴァイオリン

モダンヴァイオリン イタリア

左:リカルド・ジェノヴェーゼ 1927年製

中央:ピエトロ・スガラボット 1947年製

右:パオロ・デ・バルビエリ 1923年製

イタリアン・アンティークヴァイオリン以外にも20世紀に製作されたモダンヴァイオリンもいくつか展示されていました。

道具が進歩したこともあり、細かな部分はオールドヴァイオリンよりも綺麗な仕上がりとなっています。

ただ、やはり風格はオールドには敵いません。

音も聴けたらよかったのですが、展示だけだったのでどのような音が鳴るかは未知数です。

最後に

総額約65億円の名器を実際に見て、聴くことができた「カポラレ&オチャンド主催 ヴァイオリン展示会」。弦楽器を製作する人、弦楽器が好きな人にとっては有意義すぎるイベントでした。

今回は2回目ということでしたが、おそらく3回目・4回目も行われる可能性が高いです。

入場料無料でこれだけのことを体験できるのは実に贅沢なので、東京近郊に住んでいる方は是非来年度も情報をチェックしてみてくだい!

写真に対しての反省点

 

■もっと詳細に写真を撮ればよかった

■できる限り正面から撮るべき

■早い時間に撮らないと人が増えて綺麗に撮れない

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください