感受性が強く敏感な気質もった人のことを「HSP」といいます。
米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念で、日本においてもここ数年で急速に認知度が高まりました。
約5人に1人はHSPであるといわれており、神経質な日本人はそれ以上の割合で存在しているとのこと。
筆者である私もHSPの一人です。
HSPは個人の資質、いわゆる「個性」なのですが、同調圧力の強い日本社会において、この特性が不利に働くとことは少なくありません。
特に仕事面において苦労されている人は非常に多いです。
この記事では自分の体験を踏まえながら、HSPのキャリアパスについて考えていきます。
思うようにキャリアを築けなかった人、フリーランスに興味がある人はぜひご一読ください。
目次
HSPは組織で働くのに向かない?
HSPは「他人の気分に左右される」「大人数と過ごすと疲れやすい」といった特性を持つため、チームワーク重視の日本の職場とは相性が良くありません。
あらゆる感覚が鋭く、刺激に敏感で疲れやすいことから長時間労働にも不向きです。
旧来の日本社会を生き抜いてきた親世代、特に体育会系の方々との相性はすこぶる悪く、パワハラを受けやすかったり、周りに馴染めずに組織から浮いてしまうことも多いです。
共感能力が高いことから相手に気を使いすぎてしまい、責任を押し付けられたり、うまく利用されてしまうこともあります。
一言でまとめると、基本的に会社勤めに向きません。
HSPの人が全員組織に向いていないわけではありませんが、大半の人は何かしらの辛さを抱えていると思います。
なぜなら、適職と呼べる仕事が殆どないからです。
営業、企画、不動産、商社などノルマのある仕事。
接客や販売、コールセンター、窓口業務。
スピード感を求められるリーダー職やディレクター。体育会系の職場。
さらには電話の多い事務職まで。
HSPにとって文系職業の大半は向いていません。理系であれば黙々とできる仕事もありますが、社会人となった今から方向転換するのは難しいです。
共感力が高いことを生かして「看護士」「介護福祉士」「花屋」「動物関連」「教師」といった仕事が適職と言われることがありますが、これらも個人的には不向きだと思います。
共感力が高いのは確かですが、「他人の気分に左右される」という特性や「大人数が苦手」という特性を加味すると、多くの人の感情を受け取りやすい職場は避けた方が賢明です。
向いていない職業が多い上に、さらに向いていると言われている職業すら実は向いていない。
この状況に面して絶望的な気持ちになったことのあるHSPは少なくないはずです。
HSPに本当に向いている仕事とは?
HSPに本当に向いている仕事は、結局のところ「人との関わりが少ない」仕事。
これに尽きます。
または「セラピスト」や「マッサージ師」「家庭教師」など、1対1で相手に向き合える仕事も向いていると思います。
ただ、このような仕事って残念なことに職場環境が悪かったり、賃金が低かったりと何かしら不遇なんですよね。
ドライバーや工場でのライン作業、整備士、倉庫作業といったブルーカラーの仕事もHSPの性質的には向いてはいますが、体力的に向いているとは限りません。
WEBデザイナーやライター、イラストレーター、カメラマンといったクリエイティブ職もHSPの適職ですが、こちらも職場環境が悪いです。
私も以前企業でWEBライターや写真撮影の仕事をしていましたが、最終的には仕事内容以外の問題で退職しています。
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サービス業や接客業といった不向き職を選ぶのは論外。
向いている職を選んでも適職の労働環境が悪い。
このように、HSPが適職を選ぼうとしても、向き不向き以前の問題で職場環境や人間関係でうまくいかない可能性があります。
何回か転職を繰り返したり、メンタルを病んでブランクが空いてしまうと次に入る会社はより条件が悪くなり、さらにHSPに向かない職場にぶち当たるという悪循環。
HSPに向いている仕事は多々ありますが、HSPに向いた職場はそう簡単に見つかりません。
HSPにフリーランスは向いている?
ここからは私個人の主観的な意見になります。
HSPにとって適職及び向いた職場が見つかりにくいのは前項で解説しましたが、どうすることもできなくなった場合、思い切って個人事業主(フリーランス)を目指すのが賢明なのではと考えます。
社会保険に加入できない、信用がない、親に反対される、安定しない。
フリーランスには様々なデメリットがありますが、逆に人間関係に悩まされない、向いている仕事を追及できるというメリットがあります。
本当は正社員として働くのが今の日本で生きるには有利です。適職かつ恵まれた職場環境にありつけたのであれば、それを続けるべきでしょう。
しかし、生まれた時代や卒業した年、入社職場や人間関係によってはそれが叶わなかった人もいます。
特にある程度年齢を重ねてしまった人は、覚悟を決めてフリーランスを目指すのも悪くありません。
レールから外れた人に厳しい日本に置いて、HSPの特性をもつ人が自分に合った環境を見つけるのは容易ではありません。中小企業においてはまだまだブラックな環境の職場が多く、HSPが自分らしく働くことは難しいといえます。
ただ、職場環境の問題はフリーランスであれば問題になりません。
自分が好きな事かつ一人で黙々と作業できるなら、いくら働いても苦にならないというHSPの人も多く、非HSPの人より才能を伸ばせる傾向にあります。
孤独にも強いため、フリーランス適正は極めて高いと言えるでしょう。
とは言ったもの、HSPの誰もがフリーランスを目指すべきとは思いません。
最近巷ではフリーランスをむやみやたらにお勧めする記事が流行っていますが、私はフリーランスは最終手段に考えておくのがベストに思えます。
本来HSPは穏やかな環境で向いている仕事に就ければそれが一番なのです。
人間関係の良い職場で自分が苦手としない業務であれば、それは紛れもない適職であり、辞める必要は一切ありません。
しかし、それが叶わなかった人は、フリーランスも視野に入れて仕事選びを進めるべきです。
クリエイティブ職だけでなく、心理カウンセラーや税理士といった仕事もフリーランスに該当するので、意外と目指せる仕事は多いです。
フリーランスになりやすい仕事
人一倍疲れやすく、人間関係で悩みがちのHSPは一人で仕事するのが向いています。
もちろん、仕事をする上でストレスは避けて通れませんが、フリーランスになることで、それを最小限に抑えることができます。
また、一度フリーランスになったからといってずっと続ける必要はありません。
キャリアを続けていくことで、フリーランスとして活動した経歴が評価され、HSPに向いた職場につける可能性が高まります。
正社員に拘ってメンタルを壊すより、アルバイト+フリーランスでも良いので、自分が生きやすい仕事のやり方を模索した方が結果的に状況がよくなることも考えられます。(フルリモートの仕事に就けたりするとメンタル的に楽です)
適職:WEBデザイナー、WEBライター
個人で仕事を受注できるWEBデザイナーやWEBライターはHSPにとって天職の一つに思えます。いずれもライバルが多いため生き残るには相応の努力が必要ですが、一定のポジションをキープできれば、メンタル的な負担を大きく減らすことができます。
実際私はWEBライター兼編集としてフリーランスで仕事をしています。
クリエイティブな感性に優れるHSPであればこの分野は有利であるともいえ、挑戦する価値は大いにあります。
ちなみに上位職であるWebディレクターやコンテンツディレクター、Webマーケターも適職として勧められていますが、個人的にはお勧めできません。
マルチタスクとなり残業が増え、無理をすることで心身に異常をきたす可能性が高いからです。
HPSとしての自覚があるならば「制作スキル」を磨き上げた方が生きやすいかな?と思います。
なお、フルリモートやリモート推奨企業であれば、フリーランスでなくともHSPのデメリットを解消することができます。ある程度キャリアを積んだら、リモートOKの仕事に積極的に応募してみてください。
※システムエンジニアやプログラマーといったジャンルは正直のところ、この記事を読まれている人にはおすすめしません。
労働環境が良いのは上流工程だけで、それ以外は劣悪な環境が多いです。無論、学んですぐにフリーランスエンジニアになることもできません。
学生の頃からプログラミングが好きで勉強してきた人はスキルのレベルが違います。数学的思考力に自信がない場合、別の分野で生きる道を探した方が良いかと思います。
適職:職人
一人で黙々と良いモノを作り続ける職人もHSPの天職です。食べていくのが難しい職業ではありますが、贅沢をしなければ慎まやかに生きていくことはできます。
SNSやマーケティングといった分野ともシナジーが強いので、自分でモノを作って売る・PRするスキルがあれば、何らかの形で仕事を獲得できる可能性が高いです。
私は普段ヴァイオリンをコツコツと製作していますが、他の仕事とは異なり、どんなに作業しても全く苦になりません。
専業にできれば、天職なのだろうと感じています。
適職:作曲、音楽家、アーティスト
クリエイティブを象徴とする作曲やアートの世界。これは才能がモノをいう世界なので、HSPだから適職というわけではありませんが、もし結果を残すことができれば生きづらさを解消することができます。
自分にはこれしかない!というモノがあるならば、思い切ってそれに賭けてみるも悪くありません。
大多数の意見や同調圧力に流されなければ、別にアルバイトとアートで生活しても何ら問題はないのです。好きなことして好きに生きると心に誓えば、生きづらさは解消されていきます。
適職:講師業
向いていないようで意外と向いているのが講師業です。HSPは喋るのが苦手な人が多いですが、専門分野であれば普通に喋ることができたりします。
前もって準備しておけば慌てることもないですし、自分で準備するなら人と関わる必要もありません。
気遣いができるので講師としても高評価を得ることが多いです。
適職:カウンセラー/相談職
1対1に強い傾向にあるHSPは相手の気持ちに立って親身に向き合うことができます。看護士や介護福祉士はスピード感を求められる仕事ですが、カウンセラーや相談職はじっくり人と向き合うことができるので、適職だと感じます。
セラピストやネイリスト、マッサージ師といった職業もざっくりと当てはめれば、この分野に該当します。
ただ、日本においてメンタルヘルス分野はまだまだ不遇ポジションであるため、安定した雇用は見込めません。(社会福祉士や精神保健福祉士などは別として)
フリーランスや非正規として働くことが多くなりますが、ポジティブに受け止めれば精神的には楽かも知れません。
HSPに正社員は向かない?
HSPにとって正社員になることは必ずしもベストな選択ではないと思います。
いまだに正社員信仰の強い日本ですが、総合職の肉体的・精神的負担は非常に大きいです。
非HSPですら厳しい環境なので、HSPが勤め上げるのは少々難しいところがあります。
適応障害やうつ病になってしまうのもHSPの人が多く、無理そうであれば転職するなり別の雇用形態を模索するなりを考えた方が賢明です。
その際に「友達はバリバリ活躍しているのに・・」とか思うこともあるでしょうし、親からがっかりされることもあるでしょう。
でも、自分のことは自分にしか分からないので、「人がどう思うか?」ではなく、「自分がどうしたいか?」を重視した方が良いと思います。
その結果がアルバイトや派遣、契約社員であってもなんら問題はありません。
正社員じゃないからと人が離れたとしても、長期的に見ればいつかは離れていく人だったと思うので、スパッと諦めましょう。
経歴とか仕事とか関係なしに大切にし合える人が本当の友達だし、家族です。
また、HSPにとって散財をしないことは生きる上で重要な事です。
正直HSPはお金を稼げる人にはなりません。資本主義で上にのし上がるバイタリティーはおそらくないでしょう。
ただ、性格的に無駄な人間関係にお金を使ったり、必要以上に買い物をすることは少ないと思うので、ストレスを溜めない程度に節約するのがベストです。
たくさん稼いでもたくさん使ったらお金は残りません。逆にあまり稼がなくても使うお金が少なければ意外とお金は溜まります。
これくらい稼げればいいやと気楽に構えることで、仕事も気楽に選べるようになると思います。
たくさん稼いで色んなことをしたい!というHSS型HSPの方は頑張って稼ぎましょう。その場合はやはりフリーランスがおすすめです。
大切なのは前を向いて行動すること
HSPに本当に向いている仕事は「クリエイティブ」「作家」「人を癒す職業」だと思います。キャリアパスに悩んでいる方は、この方向性を重視してみてはいかがでしょうか?
余談ですが、私の友達や知人は大半がHSPで、そのうち約8割は自営業かフリーランスです。
自分自身もフリーランスになってしまったことから、HSPは会社員に向いていないと身をもって実感しました。
なお、どんな仕事をするにしても、HSPにとって「他人の意見に振り回されない」ことは重要です。
正社員じゃなきゃダメ。安定してない。遊んで暮らしているの?など、時に上から目線でマウンティングされることもあるかと思いますが、気にしてはいけません。
HSPはマイノリティーなので、叩かれることが多いです。その事実を認識しながら、生き方を工夫するしかありません。
関わるべきじゃない人とは距離を置きながら、自分は自分と胸を張って前を向いて行動しましょう。
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