機械式ムーブメントの仕組みを分解しながら解説!

機械式時計は機械だけで動く「芸術性」の高い時計です。

世の中に出回っている約95%の腕時計はクォーツ時計ですが、機械式時計には機械式時計でしか味わえない魅力があります。

そこで今回は先日CWC(ウォッチコーディネーター検定)の実技講習にて行った「機械式ムーブメントの分解」を参考に、機械式時計の仕組みを解説していきます。

簡易的ではありますが、機械式ムーブメントがどのように組み上がっていて、どのような仕組みで動いているのか少しわかるはずです。

機械式時計 分解

CWC ウォッチコーディネーター資格

CWCは時計界の唯一の資格。年に一回開催される試験を突破すればウォッチコーディネーターという称号をえることができます。

実は私も先日CWCの資格試験を受けて、無事合格してきました。難易度は決して難しいものではなく、よくテキストを読めば受かる内容だったと思います。

ちなみに試験は100門のマークシート形式で行われ、65点〜70点が合格ライン。時計が好きな方や資格マニアの方、さらには業界人の方など、幅広い年代の方が検定を受けていました。

尚、試験を突破すると実技講習として機械式ムーブメントの分解を体験することができます。

この実技講習が割と楽しかったので、今回は「ムーブメントの分解」に関するレポートを残すことにしました。

ETA6497-1の分解

では早速機械式ムーブメントの分解に入ります。

今回分解するムーブメントはスイスの有名ムーブメント製造メーカーETA社の「ETA 6497-1」です。

ETA

主に高級腕時計のエントリーモデルから中級モデルの機械内部を作っているスイスの老舗ムーブメント製造会社。時計のサイズや機能によって様々なムーブメントを製造しており、非常に豊富なラインナップを持つ。

ETA6497-1は余分な装飾や機能が加えられていないプロトタイプのような存在で、時計専門学校でもよくカリキュラムに組まれている機械です。

機械式時計の仕組みを理解するための分解に最も向いているムーブメントだといえます。

 

今回はあくまでも体験版なので、全てのパーツを分解するわけではありません。ただ、機械式時計の中身がどうなっているかは概ね理解することができます。

テンプとアンクルの取り外し

機械式時計 分解

まずは機械式時計の心臓部と呼ばれる「テンプ」を止めている「テンプ受け」というパーツを外します。外し方は簡単で、マイナスドライバーでテンプ受けについているネジを取り外せばOKです。

機械式時計 分解

ネジが外れたら、写真の溝の部分にマイナスドライバーを入れて持ち上げます。すると、テンプ受けがムーブメントから外れますので、外したテンプ受けをピンセットにて持ち上げて本体から離します。

機械式時計 分解

外した状態がコチラ。テンプ受けにはテンプがそのままついています。

テンプは左右に往復運動を繰り返すことで、時計に一定の精度を与えるパーツであり、最も重要なパーツです。特に「ひげゼンマイ」と呼ばれる輪の中の金属は、少しでも扱いを誤ると時計自体が使い物にならなくなる非常に繊細なパーツとなっています。

機械式時計 分解

テンプを外したら、次は「アンクル受け」と呼ばれるパーツを外します。写真の板の下に2又に分けれている細かい金属のパーツが見えると思いますが、あれがアンクルであり、アンクル受けはアンクルを取り付けるため・守るために存在しています。

また、アンクル受けもテンプ受けと同様にネジをマイナスドライバーで開けますが、テンプ受けのネジよりも細かいため、細めのマイナスドライバーを使うのが基本です。

機械式時計 分解

アンクル受けを外しました。外す際の注意点は、すぐ隣に2番車という歯車があるので、2番車に当たらないようにピンセットで慎重に外すことです。

外すと、アンクルが姿を現します。

機械式時計 アンクル

テンプ受けを外した後、非常に細かいパーツであるアンクルを外しました。アンクルはゼンマイが解かれる力を一定のスピードに抑える「脱進機」と呼ばれるパーツの一つであり、アンクルがなければ時計の針は超高速でぐるぐる周ってしまいます。

一番受けの取りはずし

機械式時計 角穴車

次は一番大きなプレートである「一番受け」の分解です。

まず最初に、ゼンマイを巻き上げるための歯車「角穴車」を外します。この歯車はネジを外すと穴が角穴になっていることが特徴です。

機械式時計 角穴車

角穴車の左には「こはぜ」というパーツがあり、リューズを巻き上げる時に角穴車をロックしてくれます。

今回はこのパーツ(こはぜ)は外しませんが、機械式時計の知識として以下のことを覚えておいてください。

【リューズを勢いよく巻き続けると、こはぜの突起が削れて、ゼンマイを巻き上げることができなくなる】

機械式時計はガリガリ巻き上げずに「巻いたら少しゆっくり戻す」を心がけるのが大切なんです。

機械式時計 角穴車

少し脱線しましたが、分解に戻ります。

まず、”こはぜ”のロックを外しながら角穴車を外します。今回は「一番受け」に取り付けられた”こはぜ”や”丸穴車”は外さないので、角穴車を外したら、そのまま一番受けを外します。

機械式時計 一番受け

一番受けの外し方は、大きなネジ×3をマイナスドライバーで外して、テンプ受けを外した時と同様に溝から一番受けを持ち上げればOKです。

尚、実際にオーバーホールされる時は全てのパーツが外されますが、今回は簡易的分解なので、難易度が高い工程は行っていません。

機械式時計 一番受け

一番受けを外すと、ゼンマイが収納された香箱車・2番車が見えてきます。ここまできたら、あとは2番受けプレートを外して、残りの歯車を外せば簡易的な分解は完了です。

二番受けと輪列機構の取り外し

一番受けを外したら、香箱車をまず外します。

香箱車は、ピンセットで浮かせば簡単に取り外すことが可能です。ただ、2番車に引っかからないように注意してください。

機械式時計 香箱

また、香箱車のなかにはゼンマイが入っており、このゼンマイはリューズを巻くことで巻かれていきます。

そして、巻かれたゼンマイが解かれることによって機械式時計は動きます。

機械式時計 二番受け

香箱車を外したら、2番目に大きいプレートである二番受けを外します。難しい点はありませんので、ピンセットでうまく外しましょう。

そして、二番受けを外したら、ゼンマイの力を伝達する歯車たち「輪列機構」が現れます。

機械式時計 輪列機構

輪列機構はさきほど外した香箱(1番車)からはじまり、2番車→3番車→4番車→がんぎ車という歯車の並びで構成された歯車軍です。

仕組みとしてはゼンマイが収納された香箱が回ると、2番車から順番に「カナ」という細かい歯車を経由しながら、最終的にエネルギーを”がんぎ車”まで伝えます。

ちなみに、輪列機構はがんぎ車のカナ部分までのことを差し、がんぎ車の車輪自体は脱進機パーツの一つとして扱われます。がんぎ車まで伝わったエネルギーはアンクルによって調整され、最終到達点であるテンプに伝えられます。

機械式時計 輪列機構

分解の手順としては、2番車・4番車・3番車・がんぎ車の順でピンセットで抜けばOKです。

輪列機構の歯車を全て抜いたら分解は終了となります。

脱進機と調速機の関係性

最後にがんぎ車とアンクルで構成される「脱進機」とテンプ・ひげゼンマイで構成される「調速機」の関係性について紹介します。

機械式時計 輪列機構

リューズを巻くと香箱のゼンマイが巻かれます。そして、ゼンマイが解かれる力は2番車から4番車を伝い、最後はがんぎ車に到達します。

この時点ではゼンマイはフルパワーのエネルギーで解かれるため、がんぎ車は高速回転してしまいます。

機械式時計 アンクル

そこで、アンクルの登場です。アンクルは突起がギザギザしているがんぎ車と噛み合い、左右に触れるような動きをしながら過剰なエネルギーを抑えます。

進むエネルギーを脱するから、脱進機と呼ばれるのです。

機械式時計 振り石

アンクルの先端はテンプに取り付けられている「振り石」が収まるようになっており、この振り石によってアンクルの往復運動がテンプに伝わります。

するとテンプはひげゼンマイの収縮によって一定の速さの振動を刻みます。

機械式時計はこのように「ゼンマイが解けるエネルギーがテンプに達する」ことで、12時間で1周する精度に変換されるということです。

まとめ

機械式ムーブメントの分解はものつくりを愛する者として非常に興味深かったです。もし高校生の時に興味を持っていたら、時計技術者を目指していたかも知れないと思えるほど、この実習は刺激になりました。

この分解工程を見て、少しでも機械式時計に興味を持ってくれる人がいたなら嬉しいです!

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