エリック・サティはフランスの作曲家であり、音楽界の異端児と呼ばれた人物です。
クラシック音楽史としては終盤に登場し、ラヴェルやドビュッシーといった印象派に大きな影響を与え、近代音楽への礎を築きました。
今回はフランス音楽界の巨匠「エリック・サティ」の音楽性と生涯について触れていきます。
目次
サティの音楽性と功績
サティ=現代音楽家のパイオニアの1人です。
サティは幼いころから洗礼を受けていたキリスト教信者であり、それに伴い宗教音楽とパイプオルガンに長らく親しんできました。
その影響から、サティの音楽には教会旋法が多岐にわたって用いられるのですが、次第に彼の音楽は旋法がどうのこうのといった次元を遥かに超越した異次元の音楽性に突入しはじめます。
調性音楽の在り方に疑問を感じていたサティは和声進行の伝統や従来の対位法の禁則を無視した音楽を作り始め、同時代の作曲家たちを困惑させました。
その型破りな音楽性から「音楽界の異端児」と呼ばれるようになるのですが、そんなことはお構いなしにサティの奇抜な音楽は凄みを増していきます。
サティの音楽の凄いところ。
それは色々なモノがないところです。
まず、サティの音楽には調性がありません。
調性から解き放たれた彼の楽譜からは一番最初に「調号」が消えました。
そして次に消えたのが「拍子」。調性のみならず拍子すらも消えたサティの音楽はいよいよ何だかよく分からないものとなっていきます。
その後、さら小節線・縦線・終止線すら廃止。完全にサティの混沌を極めます。
私は現代音楽に詳しいわけではなく、前衛的な音楽に肯定的な意見はいうことができません。
そのため、「・・・なんかすごいね」としかいえず、正直サティについてはこれ以上語ることがありません。
既存の音楽をぶっ壊そうとし、なんか凄いことをし始めた人。
現代音楽に興味がある方でなければ、そのようなイメージだけ持っておけばよいのではないでしょうか?
ただ、840回にも及び永遠に同じフレーズを繰り返すピアノ曲『ヴェクサシオン(嫌がらせ)』はミニマルミュージックの先駆けとなり、家具のように目立たない音楽として作られた『家具の音楽』では現在でいうイージーリスニングのルーツとなったことは覚えておいてもよいかもしれません。
尚、サティの曲で一般的に知られている「ジムノペディ」は彼が学生の時に作られた曲であり、まだ調性があります。
彼がぶっとぶ前に作られた作品なので、現代においても人気があるわけです。
曲のタイトルがヤバイ
サティは現代音楽のパイオニアとして一般人には理解できない曲を多数作り上げましたが、曲のタイトルもぶっとんでいることで知られています。
『犬のためのぶよぶよとした前奏曲』
『梨の形をした3つの小品』
『胎児の干物』
『でぶっちょ木製人形へのスケッチとからかい』
ぶよぶよって何?
ジムノペディのイメージが強いので、割とまともな作曲家であるイメージが強いサティですが、全然まともではないわけです。
サティの生涯
最後に音楽界の異端児エリック・サティの生涯について軽く触れます。
サティはフランス ノルマンディー地方の港町オンフルールに生まれ、幼少期は家族の死と度重なる移住による怒涛の日々を送ります。
・4歳の時:父の転職によってパリに移住
・6歳の時:母ジェインが死亡し、オンフルールに住む父が他の祖父母に預けられる。
・10歳の時:祖母ユラーリがオンフルールの浜辺で溺死体で発見される。その後パリ。
もしかしたら、この幼少期の体験がサティの突き抜けた音楽性へといざなったのかもしれません。
13歳からはパリ音楽院に進学し、約8年ほど音楽を学びますが、退屈すぎて辞め、その後はシャンソン酒場のピアノ弾きとして暮らします。
その後38歳にしてパリ・スコラ・カントルム(音楽学校)に入学し、自らの音楽性を高めながら、創作活動を続けました。
最後を迎えたのは59歳の時。肝硬変のためこの世を去りました。
サティの名曲
現代でもよく聴かれる曲は大半がキャリア前半に作られた曲です。晩年は前衛音楽の作曲に勤しんでいますが、シェーンベルクらの十二音技法の曲よりは聴きやすい印象があります。
ジムノペディ
サティが1888年に作曲した最も知名度の高い曲。気分を落ち着かせる効果があると言われており、精神科などで心理療法の治療の一環として使用されることもあります。
ただ、個人的には穏やかの中に狂気も感じるのですが。。
ジュ・トゥ・ヴ(おまえが欲しい/あなたが欲しい)
サティといえばコレ!というもう一つの名曲。シャンソンとして作曲された優美な心地よいワルツです。当時“スロー・ワルツの女王”と称され、人気を博していたシャンソン歌手「ポーレット・ダルティ」のために書かれました。
3つのグノシエンヌ
海外ドラマ「名探偵ポワロ」やアニメ「涼宮ハルヒの消失 」などで使用されたサティが24歳の時に作曲した曲。第6番までありますが、「3つのグノシエンヌ」として扱われる第1番から第3番の3曲が有名です。
犬のためのぶよぶよとした前奏曲
タイトルからして前衛的な曲かと思いきや、割と聴きやすい印象のある一曲。
1.内なる声 2.犬儒教の牧歌 3.犬の歌 4.徒党を組んで の4部構成でつくられています。
最後に
神秘的でありながらどこか穏やかであり、そして狂気も感じる。
サティの曲にはこれまでの作曲家とは一味も二味も違う摑みどころのなさがあります。
ジムノペディ、ジュ・トゥ・ヴ。
現代でよく聴かれるサティの曲はこの2曲ぐらいですが、興味があれば他の曲も聴いてみてください。
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