クラシック音楽史において度々出てくる「交響詩」という言葉。
クラシックに精通している人であれば何のことだか分かるはずですが、初心者にとっては一体なんなのか良くわからないはずです。
そこで今回は交響詩がどんなモノでどんな特徴があるのかを紹介していきます!
交響詩とは?
交響詩(こうきょうし)はロマン派時代に流行った音楽形式の一つで、管弦楽によって演奏される標題音楽のことを指します。
ただ、全ての標題音楽が交響詩と呼ばれるわけではなく、作曲家自身が交響詩として名付けたものだけが、交響詩として扱われます。
※標題音楽
文学的、絵画的な内容と結びつけられた音楽。作られた音楽に音楽以外の想念が加えられている場合、それは標題音楽といえます。
交響詩が誕生するまで
ベートヴェンやモーツァルトが生きた古典派時代の管弦楽曲は絶対音楽が基準で、「音楽は音楽のためだけに作られる」というのが一般的な価値観でした。
しかし、ロマン派に入ると曲に文学的なニュアンスを含む音楽が流行り始め、ヨーロッパ各地から次々と標題音楽が生まれます。
「音楽って別に音楽の為だけに作られてなくても良くない?」
このような価値観のもと、形式に捉われがちであった管弦楽曲は徐々に変化が生じていったわけです。
主な標題音楽
・ベルリオーズ『幻想交響曲』
自身の失恋体験をモチーフとしたストーリー仕立ての管弦楽曲
・シューマン『幻想小曲集』
夕べに 飛翔 夜に といった文学的な標題が付けられたピアノ曲集
そして、音楽界の流れを汲み、交響詩というジャンルを定着させた作曲家がいます。
その人物の名は「フランツ・リスト」。
超絶技巧ピアニストとしての功績が目立つリストですが、ピアニストを引退した後は革新派の作曲家として、クラシック音楽史における新たな一ページを開いた人物でもあります。
音楽評論家としても活動していたリストは19世紀中頃、音楽外の詩的あるいは絵画的な内容を表現する管弦楽曲のジャンルを交響詩として制定。
以後、各国の作曲家は詩的なニュアンスを含んだ管弦楽曲を交響詩と呼び、現在でも親しまれている名曲の数々が生まれました。
結局のところ、交響詩をザックリとまとめると「詩的なニュアンスが含まれるタイトルが付いた管弦楽曲」ということになります。
※交響詩は現在も作曲されている音楽ジャンルの一つですが、ロマン派的な描写表現が重要視されなくなった20世紀以降、一般的には廃れています。
交響詩の代表曲
交響曲にはベートーヴェン第5番「運命」、ドヴォルザーク第9番「新世界より」といった誰もが知る名曲が存在しますが、それと比較すると交響詩のラインナップはやや地味です。
しかしながら、素晴らしい名曲も多く残されているので、この機会に聴いてみましょう。
ドビュッシー 交響詩「海」
海はドビュッシーによって作曲された『海』を標題とする交響詩です。「北斎の浮世絵にインスピレーションを得て作曲された作品」とも言われていますが、真実は定かではありません。
楽曲は副題のついた3つの楽章にて構成され、それぞれ以下のようなタイトルが付けられています。
第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」
第2楽章「波の戯れ」
第3楽章「風と海との対話」
シベリウス 交響詩「フィンランディア」
フィンランディアはフィンランドの作曲家「シベリウス」によって作曲されたフィンランドへの愛国心をテーマとする作品です。
この曲が作られた1899年当時のフィンランドは帝政ロシアの圧政に苦しめられており、フィンランディアは抑圧政策への反抗として開かれた新聞社主催による舞台「愛国記念劇」の劇付随音楽『歴史的情景』として作曲されました。
祖国への愛国心が詰まったこの曲は全7楽章で構成され、今でもフィンランドで国歌に次ぐ第二の愛国歌として親しまれています。
スメタナ 交響詩「わが祖国 モルダウ」
スメタナの代表的な作品「わが祖国」。交響曲と混同している方が多いですが、実は交響詩です。
チェコ国民音楽として記念碑的な作品として作られた「わが祖国」は全6曲で構成される連作であり、有名なモウダウはその第2曲に当たります。
第1曲:ヴィシェフラド
第2曲:モウダウ
第3曲:シャールカ
第4曲:ボヘミアの森と草原から
第5曲:ターボル
第6曲:ブラニーク
R.シュトラウス 交響詩「ドンファン」
ドンファンはリヒャルト・シュトラウスがによって1888年に作曲された交響詩です。女性を誘惑し続けたプレイボーイの貴族「ドン・ファン」を主題とした作品となっており、ハンガリーの詩人「ニコラウス・レーナウ」の詩に基づいて作曲されています。
演奏時間は交響詩としては短い約17分ですが、「悦楽の嵐」「不満」「悲劇的な死」といった濃厚なストーリーを暗示させる内容が続くため、飽きません。
ツェムリンスキー 交響詩「人魚姫」
交響詩「人魚姫」はオーストリアの作曲家アレクサンダー・ツェムリンスキーがアンデルセンの童話『人魚姫』を基に作曲した交響詩です。
第1楽章 – 非常に重々しく
第2楽章 – 大きく動いて、ざわめくように
第3楽章 – 苦悩に満ちた表現で、広大に
という3楽章から曲がなりたち、人魚姫のストーリーを管弦楽によって見事に再現しています。
最後に
何となく交響詩が何なのかイメージできたでしょうか?
交響詩は文学や絵画といったたの芸術と音楽を結びつけた管弦楽曲であり、ストーリー仕立てで曲が展開する作品が多いです。
現代的に当てはめると、映像のない映画音楽といえるかもしれません。
クラシック初心者にとっては実は交響曲よりも取っつきやすいジャンルだったりもするので、この機会に是非様々な交響詩を聴いてみてください。
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