クラシック音楽の全盛期「ロマン派音楽」について

ロマン派音楽は古典派音楽をロマン派の精神によって更なる高みへと押し上げた、クラシック音楽において最も華やかな時代です。
この時代では「ショパン」「リスト」「シューマン」「ヴェルディ」「ワーグナー」「ブラームス」といった有名作曲家は多数現れ、音楽界を大いに盛り上げました。

今回はロマン派時代がどんな時代であったのかをご紹介します。

ロマン派作曲家

 

ロマン派主義ってなに?

冒頭でロマン派の精神という言葉を使いましたが、これはロマン派主義の事を指します。

ロマン派主義は18世紀末から19世紀で起こった精神運動の一つであり、「理性偏重」「合理主義」といった特徴をもった古典主義とは異なり、感受性や主観に重きをおいた新しい考え方です。

文学・美術・哲学といったあらゆる芸術分野でロマン主義は取り入られるようになりましたが、音楽分野では主に古典派〜近代音楽・印象主義の間の時代がロマン派の時代と呼ばれています。

西暦でいうと大体1800年代初頭から1900年頃の時代を指し、作曲家で表すとベートーヴェンの全盛期からシェーンベルクの時代に突入する位までの時期です。

ロマン派音楽の特徴

ロマン派音楽の特徴はバッハ・モーツァルト・ハイドン・ベートーヴェンといった名立たる作曲家たちが作り上げてきた機能和声法に半音階的なニュアンスを取り入れ、さらに大きな動きを取り入れた音楽性です。

オーケストラの編成はこれまで以上に大規模になり、それに伴い演奏時間も増えています。

例えば交響曲。

古典派時代の交響曲は長くても30分以上になることはありませんでしたが、ロマン派時代の交響曲は当たり前のように30分オーバーの曲が並び、ロマン派の終盤に入ると1時間にも及ぶ曲が現れ始めます。

また、古典派主義の音楽は「合理主義」によってかなり理論ずくめのカッチリとして音楽でしたが、ロマン派音楽は「感情表現」を押し広げられており、心の深いところを表現するロマンティックな音楽へと進化を遂げています。

古典派音楽よりメロディアスな曲が多く、クラシック音楽初心者でも楽しめる曲が多岐にわたって存在することが特徴です。

ロマン派音楽

しかし、ロマン派の音楽はそのどれもがロマンティックであるわけではなく、基本的には古典派音楽から受け継がれてきた曲作りの構造はキープした古典派の延長線上の音楽です。

ショパンやリストが作り上げた現代でもロマンティックな音楽として認定される曲もあれば、シューベルトやブラームスが作り上げた曲のように、かなり古典派風な曲も存在します。

ロマン派音楽といえばコレ!という特徴がない

バロック音楽や古典派音楽は、聴けばこの時代の曲っぽいということが分かります。バロック時代は宗教音楽や貴族に向けて音楽が作られたため、宗教チックな曲や貴族チックな曲が主流です。

また古典派音楽では機能性和声が確立され「構造的な音楽」が多岐にわたって輩出されましたが、貴族に向けられた音楽という点ではバロック音楽と同じです。

これらの時代では求められていた音楽が明確であったため、どの作曲家の曲を聴いても割と似ています。

ゲームがお好きな方であれば、ドラクエのBGMを連想すると分かりやすいでしょう。

しかし、ロマン派音楽には絶対的な特徴がないため、作曲家によって大きく作風が異なります。

古典派音楽を追随した作曲家の曲であれば古典派のような曲が展開されますし、逆に新しい音楽の形を模索し「革新的な音使い」を目指した作曲家が作り上げる曲は古典派にはない雰囲気を持っています。

指揮者

バロック・古典派の前半においては音楽は教会や貴族の為に作られるのが基本でしたが、ロマン派に入ると音楽は民衆の為の音楽へと変貌を遂げました。

それに伴い誰に向けて書くか、どのような音楽を目指すかはこの時代では「自由」になっています。

作曲家によって大きく個性が異なるため、最も聴いていて楽しいのはロマン派音楽だといっても過言ではありません。

初期ロマン派(1800年〜1830年頃)の作曲家

初期ロマン派はベートーヴェン・シューベルト・ウェーバーといった作曲家が活躍した時期であり、オペラを中心とする劇音楽や歌曲が発展しました。

ベートーヴェン

ベートーヴェン ロマン派

現代において、クラシック作曲家として最も有名な人物といえば彼でしょう。
耳が聴こえなくなっても名曲を書き続けたインパクトのあるエピソードは勿論のこと、英雄・運命といったダイナミックで力強い交響曲は今尚輝きを放ち続けています。

また、当時の音楽界にも多大なる影響を与えたことでも知られており、特に交響曲においては彼の作り上げた曲がロマン派時代において基準となりました。

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シューベルト

シューベルト ロマン派

ベートーヴェンとほぼ同時代を生きたシューベルトは貧困家庭にて育った苦労人です。人柄が良く友人にも恵まれた彼は、貧困にあえぎながらも友の力を借りて少しづつ作曲家としての価値を高めていきます。
歌曲の王として多岐にわたる名歌曲を残しましたが、存命期間においては高い評価を獲得することはありませんでした。

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ウェーバー

ウェーバー ロマン派

ドイツオペラの重鎮であり、ワーグナーに大きな影響を与えた重要人物。
現代でこそオペラ「魔弾の射手」以外は演奏される機会の無いマイナー作曲家として扱われていますが、当時の音楽界においては相当な人気を誇っていたといわれています。

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ロッシーニ

ロッシーニ ロマン派

この時代のイタリアオペラ作曲家としては最も高い人気を誇っていたといわれるロッシーニ。39曲にもわたるオペラを作曲しましたが、
40代に入ると完全に音楽界から引退し、美食家として活躍しました。フランス料理の○○のロッシーニ風という言葉は彼によって生み出されたモノです。

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中期ロマン派(1830年〜1850年頃)の作曲家

中期ロマン派は現代におけるクラシック音楽の人気作曲家が集まる華の時代です。
メンデルスゾーン・シューマン・ショパン・リストといったまさにロマンティックな作曲家が凌ぎを削りました。

また、この時代はヴィルトゥオーソと呼ばれる超絶技巧プレーヤーが多く輩出され、ピアノではリスト、ヴァイオリンではパガニーニが最強のプレーヤーとして名声を得ました。

メンデルスゾーン

メンデルスゾーン ロマン派

結婚行進曲が有名なイケメン作曲家。クラシック音楽屈指の裕福な家庭に生まれ、順風満帆な創作人生を送りました。
苦労しらずな「おぼっちゃま」であったことから、曲に重みがないという評価もありますが、優しい曲・優雅な曲が好きな人にはすこぶる人気があります。
3大ヴァイオリン協奏曲の一つ「メンコン」はヴァイオリン奏者の憧れの一曲として有名です。

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シューマン

シューマン ロマン派

生涯に渡って愛に生き、そして苦悩を味わったシューマンは実に「ロマン派」という言葉が似合う作曲家です。妻となったクララとの大恋愛、ピアニストを断念することとなった指の怪我、そして入水自殺を図るほど苦しめられた精神障害。余りにも過去な運命に翻弄された彼が作り上げた名曲の数々には独特な雰囲気があります。

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ショパン

ショパン ロマン派

ピアノ学習者の永遠の憧れであり、現代においても絶大な人気を誇るショパン。英雄ボロネーズ・別れの曲・革命のエチュード・ノクターンop9-2といった数々の名曲を残し、そのどれもロマンティックな曲調です。
病弱であったため、体に負担のかかる大規模なコンサートは好まず「サロン」での演奏を中心に活躍しました。

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リスト

フランツリスト ロマン派

ピアノの魔術師と呼ばれ、超絶技巧プレーヤーとして名を馳せたリスト。「愛の夢」「ラ・カンパネラ」「ハンガリー狂詩曲」「メフィストワルツ」といった高難易度の曲を武器に、当時の音楽界を席巻しました。
尚、キャリアの後期はプレーヤーではなく主に作曲家として活動を展開し「無調」への流れを創り上げたことでも知られています。中期ロマン派に分類こそしましたが、晩年の活動は後期ロマン派として扱ったほうが無難です。

関連記事:ピアノの魔術師 フランツ・リストの生涯

ベルリオーズ

ベルリオーズ ロマン派

フランスのロマン派作曲家として最も大きい影響を与えたベルリオーズ。文学や詩を愛した彼は文学・絵画・劇といった音楽以外の芸術の内容を暗示させる「標題音楽」を確立させ、音楽の新しい在り方を示しました。

関連記事:幻想交響曲を作り上げたベルリオーズの生涯

後期ロマン派(1850年〜1890年頃)の作曲家

1850年以降の欧州は鉄道や電信技術が発達し、社会構造が大きく変化しました。また、ナショナリズム(民族主義)が活発化し、国民楽派と呼ばれる自国の音楽性を重視する作曲家が多く現れたこともこの時代の特徴です。

後期ロマン派終盤にはおいてはワーグナーが作り上げた「楽劇」によりオペラがより一層欧州で盛んとなり、彼の無調的な音使いはドビュッシー達の「印象主義」、シェーンベルク達の「十二音技法」を通り、やがて完全なる無調へと到達します。

ワーグナー

ワーグナー ロマン派

後期ロマン派において、最も重要な作曲は間違いなくワーグナーです。
圧倒的なカリスマ性をもっていたワーグナーはこれまでの劇音楽を根本から覆す「楽劇」を創り上げ、音楽の歴史を大きく塗り替えました。
特に伝統的な和声を崩した「トリスタンとイゾルデ」の作曲以降は、他の作曲家がそれを追随し始め、結果的に彼の存在がロマン派音楽の終焉へと誘うこととなりました。
ちなみに性格はかなり難がある人間であり、音楽に関しては高い評価を獲得している一方で、人間性に関しては否定的な人が非常に多いです。

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ブラームス

ブラームス 作曲家

バッハ・ベートーヴェンと並ぶ3大Bの一角を占めるブラームス。ロマン派時代の作曲家ではもっとも古典派に近い楽曲を残した人物です。

彼が残した有名曲は「交響曲」に集中しており、代表曲『交響曲第1番』はベートーヴェンの10番目の交響曲と言われるほど雰囲気が似ています。

厳格で重い、保守的な絶対音楽を生涯作り続けた彼の音楽性は「時代の流れ」とは真逆の性質をもっていましたが、古くからの音楽ファンからは絶大な支持を集めました。

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チャイコフスキー

チャイコフスキー ロマン派

バレエ音楽の作曲家として名を馳せた名作曲家。民族主義時代に人気を博した人物ですが、割と欧州の音楽に忠実なオーソドックスな作曲スタイルです。

チャイコフスキーは内気な性格であったことも有名で、同時代の作曲家たちとは距離を置きながら作曲活動を行いました。また、ゲイであることがバレるのを嫌がって自殺したと噂される晩年は未だに多くの謎に満ちています。

しかしながら、彼が残したメロディアスな音楽の数々は現代において色褪せることはありません。

関連記事:繊細で内気な性格だったチャイコフスキーの生涯

ロシア5人組

ロシア五人組 ロマン派

チャイコフスキーとは対照的に、ロシアの民族音楽を取り入れた音楽性を展開したのが「バラキレフ」「キュイ」「ムソルグスキー」「ボロディン」「リムスキー」で構成されたロシア5人組です。

彼らが作り上げた音楽はロシア国内に留まらず、欧州各地に影響を与えました。

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サン=サーンス

サンサーンス ロマン派

フランスの作曲家であるサン=サーンスは、ピアニスト・オルガニスト・指揮者としてフランス屈指のロマン派音楽家として活躍した人物です。
ただ、後期ロマン派の作曲家でありながら古典的な曲ばかりを作曲していたことから絶望的に古臭い作曲家と称されました。
現代ではその評価が見直されており、フランス唯一の古典派という特殊な認識を受けています。

関連記事:歴史に嫌われた不遇の作曲家 サン=サーンスの生涯

最後に

ロマン派音楽はバロック・古典派のような堅苦しさが薄れており、中期以降の作曲家が残した曲に関しては普段クラシックを聴かない人でも聴きやすいと思います。

特にショパン・前期のリスト・メンデルスゾーン・チャイコフスキー辺りはどなたにもオススメです。(好みは人に拠ります)

勿論それ以外の作曲家にも名曲が無数に存在しますので、是非定番曲だけでも聴いてみてください。

100年以上が経過した今尚愛され続ける曲にはそれだけの理由があるのですから。

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