ヴァイオリンを始めたいけど、今更クラシックはちょっと。。
そのようにお考えの方にオススメなのがアイリッシュフィドルです。
アイリッシュフィドルはハイポジションを使わないことからクラシックヴァイオリンよりも技巧的な難易度が低く、レイトスターターにも始めやすい音楽として知られています。
しかし、決してクラシックに劣る音楽ということにはなりません。フィドルにはフィドルにしか出せない「独特のノリ」があり、クラシックにはない魅力を秘めています。
そこで今回はアイリッシュフィドルの魅力について解説致します。
アイリッシュフィドルについて
アイルランドで演奏される民族音楽の奏法をアイリッシュフィドルと呼びます。
フィドルという言葉はクラシック以外のジャンルで演奏される際のヴァイオリンの事を指し、名称は異なっても楽器自体は全く同じモノです。
まずはアイリッシュ音楽がどんな音楽なのかを演奏動画で確認してみましょう。
最初の動画が伝統的なアイリッシュ音楽。2番目の動画はフィドルソロです。
ヴァイオリンよりもテンポが速く、さらに独特なリズムで曲が進むのが印象に残ったと思います。
これこそがフィドルの魅力であり、醍醐味なんです!
また、覚えておきたいのはフィドルは踊りの伴奏として奏でられる「ダンス音楽」であること。
芸術表現であるヴァイオリンとは違い、みんなで楽しむために演奏される音楽ということになります。
技巧的な部分は難しくはない
フィドルは1stポジションしか使わず、しかも一番弾きやすいDスケールの曲が圧倒的に多いです。(GやCといったスケールもありますが)
この時点で技巧的には相当クラシックよりも楽だといえます。
しかも基本的にヴィブラートもかけないので、時間のない社会人にとっても練習しやすいです。1曲1曲が短く、楽譜も使わないため、例え音楽初心者であっても気軽に始めることができます。
ただ、一見簡単にも思えますが、独特なノリを出すには一筋縄ではいきません。
ヴァイオリンは歌う、フィドルは踊るといわれ、同じ楽器でありながらも表現方法が全く異なるからです。
プロのヴァイオリニストがアイリッシュフィドルを演奏してもそれは「ヴァイオリン」であり、フィドルにはなりません。
技巧的な部分ではなく、このノリを出すことがアイリッシュフィドルの学習者にとっては重要です。
とはいえフィドルは1stポジション・Dスケールに絞って練習することができるため、上達スピードはクラシックを習うよりも早いと思います。
また、フィドルは速弾きすることから、弓を端から端までつかう必要がありません。
ちょこまか弾きでも練習しやすいため、集合住宅であっても練習しやすいことも魅力です。
「ノリ」を出すことに関しては難しいですが、取っ付きやすさに関してはクラシックよりもフィドルの方が上だといえます。
アイリッシュフィドルは安い楽器でも許される
アイリッシュフィドルの敷居の低さは楽器の価格にも現れています。
学生オケ、市民オケ、プロオケ、ソリスト。
クラシックのヴァイオリンは高みを目指せば目指すほど良い楽器が求められます。
ステージのレベルが上がれば上がるほど、安い楽器を使うことは許されなくなると感じている方も多いでしょう。
しかし、アイリッシュフィドルはもともと農民が仕事が終わった後に酒を飲みながら楽しんだ音楽です。
昔から高価な楽器は使われず、気楽に楽しまれてきた歴史があります。
アイリッシュ音楽が生まれてから少なくとも100年以上が経過していますが、現在においてもその価値観は変わらず、日本の愛好家もクラシックのような高価な楽器は使われていません。
なんなら1万円程度の中国製ヴァイオリンを愛用している方もいる程で、「楽器が高くて買えないから始められない・・」と楽器を始めるのを諦める必要はないです。
プロでさえ30万以下の楽器で十分とも言われており、上達とともに買い替える必要性がないこともメリットだといえます。
アイリッシュ以外のフィドル
日本におけるフィドル演奏はアイリッシュフィドルが主流ですが、ケルト系のフィドルには他にも種類が存在します。
スコティッシュ・フィドル
アイルランドのお隣のスコットランドのフィドル。基本的にはアイリッシュに似ていますが、島や地域によって異なる特徴があります。
日本でも近年人気が上がっており、スコティッシュをベースにフィドルを楽しんでいる方も多いです。
ウェルシュ・フィドル
英国ウェールズのフィドル奏法です。ウェールズではケルト系の言語に属する
「ウェールズ語」が話されており、アイルランドやスコットランドのようなダンス音楽が独自の文化として発展してきました。
あまり馴染みのない音楽とはなりますが、ネットが普及した現代では動画からその特徴を学ぶことができます。
ケープ・ブレトン・フィドル
カナダの南東部に位置する島「ケープ・ブレトン島」で発展したフィドル奏法。スコットランドの移民によって開花した伝統音楽であり、ベースはスコティッシュフィドルです。
他の地域とは異なり、伴奏にピアノが使われることもあります。
これ以外にも各地にフィドルは存在しますが、1stポジション・Dスケール・ヴィブラートなしで演奏され、独特なノリを持つことはどの地域も同じです。
どのフィドル奏法から学んでも良いですが、ひとまずは日本において情報が入りやすいアイリッシュをベースに学ぶと良いかもしれません。
どこで学べる!?アイリッシュフィドル
クラシックは気が進まないけど、フィドルならやってみたい!
そう思っても、実は日本においてアイリッシュフィドルが習える場所は殆どありません。。
関西・中部で数カ所、関東に数カ所習える場所があるくらいで、その他の地域では動画を見ながら独学することしかできないのが難しいところです。
技巧的にはクラシックより簡単だとはいえ、「カット」「ロール」「トリプレット」といった独自の装飾音に加え、「リール」「ジグ」といったダンス音楽ならではのノリの違いを学ばなければなりません。
そのため、出来ればフィドル奏者から直接習いたいものです。
フィドル奏者Takaさん
アイルランド公認の認定資格を持つTakaさんはフィドルのレッスンを行っています。楽譜を使わず耳コピで曲を覚えていく伝統的なスタイルレッスンをとっており、本場のノリを肌で感じることができます。
都内(池袋駅近く)の教室でレッスンは行われていますが、出張レッスンやオンラインレッスンも可能なようです。
ギター・フィドル奏者 坂本健さん
フィドルのみならずギター・マンドリン・バンジョーといった楽器奏者としても活躍している坂本健さん。下北沢で教室を開講されており、オンラインレッスンも行っているようです。
アイリッシュのみならずブルーグラス(カントリー音楽)にも精通しており、どちらの音楽にも興味がある方はレッスン受講に向いているかもしれません。
フィドル奏者 小松 大さん
名古屋にて精力的に演奏活動を行われている小松 大さん。地下鉄一社駅より徒歩5分のスタジオにてレッスンを受けることができます。
フィドル奏者 大森ヒデノリさん
大阪、名古屋を中心に、フィドルのレッスンや伝統音楽のワークショップを開講されている大森ヒデノリさん。
サークル活動も盛んに行っていることから、生徒さんが多く、日本でもっとも知名度があるフィドル奏者といっても過言ではありません。
日本においてフィドルが関西の方が勢いがあるのは、この方も影響が強いと思います。なお、大森ヒデノリさんはアイリッシュのみならずスコティッシュやスウェーデン音楽にも詳しい方です。
主に国内でフィドルのレッスンを行っているのは上記の方々です。
スカイプレッスンを受け付けてくださる方もいるので、もしフィドルを習いたくなった時は問合せしてみてください。
最後に
今回はアイリッシュフィドルについて簡潔ながら説明させていただきました。
アイリッシュフィドルはダンス音楽として発展したことからクラシックとは異なる魅力を持ち、弾いていて楽しさを感じやすい音楽だといえます。
技巧的にもとっつきやすいため、大人からヴァイオリンを始めるレイトスターターの方にも適しているといえるでしょう。
学べる場所が少ない事がネックではありますが、もし興味がある方は勇気をもって始めてみてはどうでしょうか?