ヴァイオリンの名器として知られるストラディヴァリウス。ヴァイオリンに詳しくなくても、この名前はおそらく誰でも知っていると思います。さらに、少し詳しい人ならガルネリ・デル・ジェスという楽器もきっと知っているはずです。
これらの名前は天才弦楽器製作者が作ったヴァイオリンの名称であり、製作者の名前がつけられています。しかし、この名前は実は本名ではなく、芸名のようなものだったり、通り名のようなものであることをご存知でしょうか?
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ストラディヴァリ
ストラディヴァリウス=芸名
圧倒的な知名度を誇る楽器「ストラディヴァリウス」。
この楽器はイタリアの弦楽器職人ストラディヴァリが製作した弦楽器のことを指しますが、気になるのは名前に足された「ウス」のこと。「ウス」ってなに?複数形?といった疑問を持つ方も多いでしょう。
結論からいうと、ストラディヴァリウスの「ウス」はストラディヴァリという名前をラテン語にしたものです。正確にはラテン語というよりもラテン語っぽいものなのですが。
この「ウス」を付け加えた名前は芸名のようなもので、よくストラディヴァリはストラディヴァリウスという名でサインをしていたと言われています。製作者の本名はストラディヴァリですが、楽器にはストラディヴァリウス作と書かれていたというわけですね。
時間が経つにつれ、その芸名である「ストラディヴァリウス」が楽器の名称として定着し、本名のストラディヴァリはストラディヴァリウスの製作者という認識になりました。
イタリア語/ラテン語の地位
この当時の音楽の最先端は間違いなくイタリアでした。楽譜にも主にイタリア語が使われており、人々はこの言語に憧れと誇りを持っていたのです。
この風潮はクラシック音楽史でいうロマン派に指しかかるまで続いたため、ドイツやオーストリアの作曲家であるベートーヴェンやモーツァルトもイタリア語にてサインすることが多かった言われています。
また、イタリア語の元となったのはラテン語。このラテン語を習得することは「優れた品格をもつ者」の証明とされていたため、ストラディヴァリは自らの名に「ウス」をつけたのではないかと推測されます。見栄といえば見栄なのでしょうけど。。
ちなみにガルネリ・デル・ジェスも本名ではない
ガルネリ・デル・ジェスはストラディヴァリの次に有名なヴァイオリンの名器です。現代における新作ヴァイオリンの多くはストラディヴァリかガルネリ・デル・ジェスがベースとなっており、力強い音が出やすいデル・ジェスを好む方は非常に多いです。
そもそも「ガルネリ」という言葉は一族の名前を指しており、ガルネリファミリーは以下の5人に分かれます。
■アンドレーア・グァルネリ(初代)
■ピエトロ・ジョヴァンニ・グァルネリ(アンドレアの長男)
■ジュゼッペ・ジョヴァンニ・バッティスタ・グァルネリ(アンドレアの末息子)
■ピエトロ・グァルネリ(ジュベッセの息子)
■バルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリ(ジュベッセの息子)
一般的に現在の音楽界でガルネリと呼ばれているのは一番下のバルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリです。そして、彼には「デル・ジェス」という通り名がありました。
デル・ジェスとは
デル・ジェスには「神」「イエス」という意味があり、熱心なキリスト教信者だったバルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリは作品のラベルにイエス・キリストのロゴマーク【ベルナルディーノの徴】を採用していました。その結果、兄弟であるピエトロ・グァルネリとの区別する意味も兼ね、彼を「デル・ジェス」と呼ぶ人が増えたとされています。
また、バルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリの作り上げる作品はストラディヴァリをも超えると高い評価を得ており、彼の実力に対しても「神」という言葉があてがわれるようになりました。そして、ガルネリファミリーの「神」の意で「ガルネリ・デル・ジェス」という名が一般的に知られるようになります。
弦楽器愛好家の間では製作者の名前をデル・ジェス。作品の名前を「ガルネリ・デル・ジェス」と呼ぶことが多いです。
まとめ
一般的に知名度が高い「ストラディヴァリウス」「ガルネリ・デリ・ジェス」。これらの名前は製作者と楽器の名称を表しますが、どちらも実は本名ではありません。ストラディヴァリウスはストラディヴァリの芸名であり、ガルネリ・デル・ジェスはバルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリの通り名です。
雑学といえば雑学ですが、覚えておいて損はない知識ですので、是非知っておいてください。