トロンボーンは金管楽器の中において最もインパクトのある楽器です。
語源はトランペットを意味する「tromba」というイタリア語に大きいという意味をもつ(-one)という接尾語(-one)を付けた造語であり、楽器としてはトランペットの仲間として扱われます。
今回はオーケストラや吹奏楽といったジャンルで幅広く活躍するトロンボーンについて解説します。
この機会に是非トロンボーンの基礎知識を蓄えちゃいましょう!
トロンボーンってどんな楽器?
トロンボーンは大きなトランペットという意味をもつ楽器であり、基本的な楽器の構造はほとんどトランペットと一緒です。
ただ、トランペットと大きく異なるのは、スライドと呼ばれるパーツが付いていること。
トロンボーンはこのスライドの位置をずらすことで、音程を作ります。
ボタンを押せばとりあえず音程は保たれるトランペットとは異なり、スライドの位置を調整することで演奏されるトロンボーンはヴァイオリンのように音程の目安となるポジションがありません。
耳と感覚・経験によって正しい音程を探すことになるため、金管楽器の中でも難易度は高めです。
ちなみに一昔前はスライド式の他に1個or2個のバルブ/迂回管を持つトロンボーンも存在しましたが、現在はスライド式が主流となっており、管弦楽においてはバルブ式のトロンボーンが使われることは殆どありません。
スライド式は音程をとることは難しいですが、音と音を滑らかに繋げることができるため、ポルタメントやグリッサンドが得意です。
繊細な表現が可能となっているため、バルブ式に変わり重宝されるようになりました。
尚、バルブ式トロンボーンは下の画像のような楽器です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/トロンボーン から引用
トランペットのようにボタンがついていて、これを押しながら演奏者の唇の振動によって発音します。現在はジャズの分野で使われることが多く、ジャズ用トロンボーンという印象が強いです。
ジャズにとことん精通したい!という方でなければ「トロンボーン=スライド式」と一先ず覚えておけばよいでしょう。
トロンボーンの歴史
現在主流となっているスライド式トロンボーンの元となる楽器は15世紀頃に開発されたといわれており、スライドによって奏でられる美しいハーモニーから「神の楽器」と称され、宗教音楽の伴奏として使用された歴史を持ちます。
その後、徐々に宗教音楽の枠を超えてトロンボーンが使用されるようになり、19世紀にはバルブ式のトロンボーンが流行。一時はこちらが主流となりました。
しかし、20世紀に入るころに再びスライド式がトロンボーンの主流に返り咲き、改良と派生を繰り返しながら現代にまでその歴史を紡いでいます。
トロンボーンは非常に古い歴史を持つ楽器ですが、起源はトランペットと一緒です。大きなトランペットという意味を持つ楽器ですので、トランペットの祖先が広い意味ではルーツいうことになります。
トロンボーンは種類が豊富!
トロンボーンはクラリネットやサックスと同様に、様々な種類の楽器が存在します。
主なラインナップは以下の通りです。
・ピッコロトロンボーン
・ソプラノトロンボーン
・アルトトロンボーン
・テナートロンボーン
・テナーバストロンボーン
・バストロンボーン
・コントラバストロンボーン
種類自体は多岐にわたりますが、管弦楽や吹奏楽では「テナーバストロンボーン」が主に使われています。
テナーバストロンボーンはテナーバストロンボーンにF管アタッチメントを合体させたモノで、テナーバストロンボーンでは手を極限まで伸ばさなければ演奏できなかった音域が簡単に出せるようにカスタマイズされた楽器です。
トロンボーンはスライド式という唯一無二の特徴を持つため、絶妙なバランスでなりたっています。
そのため、テナートロンボーンorテナーバストロンボーン以外は基本的に扱いにくく、現代では殆ど用いられません。
楽器が重すぎてもスライドさせにくく、かといって小さすぎても扱いが難しい。
種類こそ豊富に存在しますが、テナー系のトロンボーン以外は非常にマイナーな楽器であるといえます。
トロンボーンの音域と記譜について
トロンボーンは「成人男性の声域」を奏でると称されており、オーケストラの主要楽器としては低音楽器に属します。
トロンボーンの音域は上記の通りですが、もっともメジャーなテナーバストロンボーンの音域はF0〜C4。
トランペットより約1オクターブ低い音域を奏でることができ、音域もトランペットよりも広いです。
音域の広く繊細な表現を得意とすることから金管楽器群の中では「ハーモニー」を担当することが多く、万能な活躍をすることも覚えておくと良いと思います。
ちなみにトロンボーンは移調楽器です。B♭管やE♭管、F管、D管等が存在しますが、最も一般的なトロンボーンはテナーバストロンボーンのB♭管です。
-移調楽器-
楽譜上の音符と実際出る音が違う楽器。
例えばB♭管(シ♭)の場合、楽譜上の「ド」の音を吹くと、実際はドではなくシ♭が出ます。
作曲家はこの性質を考慮して、他の楽器に合わせて楽譜を書かなければなりません。
ただ、トロンボーンは構造的には移調楽器ではありますが、C管の楽器と同じくオーケストラでは「実音」で記譜され、記号としては基本的に「ヘ音記号」が使われます。また、高音域に関してはテナー譜表やアルト譜表が使われることも多いです。
トロンボーンの音色を聴いてみましょう!
剣の舞 トロンボーン
トゥーランドット」より、「誰も寝てはならぬ」
スターウォーズ セレクション トロンボーン
最後に
トロンボーンはソロ楽器としては癖がありますが、合奏用としてはジャンルを問わず重宝する楽器です。
スライドによる滑らかなグリッサンドやポルタメントは、似たような音色と思われがちな金管楽器の中でも独自のキャラクター性があります。
弦楽器奏者や製作者にとっては馴染みが薄い楽器ではありますが、オーケストラを盛り上げる定番楽器の一つであることは頭の片隅に置いておきましょう。