オーケストラで使われる楽器は、弦楽器・木管楽器・管楽器など多岐にわたりますが、シンプルな打楽器である「シンバル」も立派なオーケストラ楽器です。
シンバル奏者はオーケストラ奏者の中で格下の存在と思われがちですが、ヴァイオリン・チェロ・フルート奏者と同等の報酬が払われる立派な一流奏者であることには変わりありません。
今回は地味?にも思えるシンバルについて掘り下げてみます。意外と奥が深いシンバルについてこの機会に知っておきましょう!
シンバルにも種類があります
ガッシャーン!と曲の美味しいところで効果的に音を鳴らすシンバル。
シンバルといえば、同じ形のシンバルを2枚対向させて打ち合わせる「クラッシュシンバル」を連想しがちですが、実はシンバル奏者はこの「クラッシュシンバル」だけを担当するわけではありません。
このようにホルダにゆるく固定して、スティックでたたくシンバル「サスペンデッド・シンバル」もシンバルの仲間です。
基本的にはシンバル奏者はこの2つのシンバルを楽曲によって使いわけます。
クラッシュシンバル・・擦らせるようにして2つのシンバルを打ち合わせ、大音量を打ち鳴らしたり、繊細な音を操ります。ちょっとした擦り方で表情が変わってしまうので、大雑把に見えて実はかなり高度な技術が必要です。
サスペンデッド・シンバル・・スティックを細かく反復して打ち、徐々に音量を大きくすることで曲を盛り上げることが主な役割です。曲のダイナミクスに大きく貢献します。
また、シンバルには様々なサイズがあり、一般的に使われる大きさは「18インチ・19インチ・20インチ」前後ものですが、他のサイズのシンバルも曲によっては用いられます。
もちろん、サイズが変わればシンバルの扱いも変わるので、サイズに応じたテクニックも学ぶ必要性があるのです。
楽に思われるシンバル奏者ですが、掘り下げてみると実際は「曲によって繊細に音を創り上げるプロフェッショナルな存在」だといえます。
ひどい人はサルのおもちゃのようにシンバルをたたいているだけの存在と思っているようですが、それ偏見です!
一撃必殺のプレッシャー
演目によっては、シンバル奏者の出番がクラッシュ・シンバル一発だけということもあります。
たとえ、その一発だけが仕事であっても正式団員であれば、他のパートと同じ報酬がもらえるので、一見美味しいパートだと思われがちです。
しかし出番「一発」だけ、いわゆる一撃必殺のプレッシャーは想像以上だと思います。
ヴァイオリンやヴィオラといったパートは大人数で演奏されるパートは仮に「あっ、やっちまった!」と思っても何とかなります。
※小学校の音楽会を思い出してください。リコーダーやハーモニカといった人数が多い楽器なら離脱してもやり過ごせましたよね?
しかし、クラッシュ・シンバルは失敗してしまったら、即バレますし、やってしまった感が凄まじいです。
一撃必殺のクラッシュ・シンバルの出番は大半が楽曲のクライマックス。いわば一番いいシーンなので、失敗すると目立つなんてもんじゃありません。
もし失敗したら、団員及びお客様からの冷たい視線を浴びることは確実です。
一発しか出番がないからこそ、妙なプレッシャーを感じてしまうかもしれません。また、勝手な想像ですが、長時間何もせずに突っ立ってると集中力が切れてきそうです。。
切れた集中力の中で一撃で最高の音を出すのは案外難しい気がします。
シンバル奏者はフリーランスも多い
シンバル奏者は正式団員だけでなく、一公演ごとに報酬が払われるフリーランスも多いです。数をこなせば結構稼げるのかもしれませんね。
ただ、正式団員以上に「ミス」のリスクが大きく、常に失敗が許されない環境で戦い続けなければいけないので、これはこれで過酷だと思います。
シンバルの素材
シンバルは「銅」を主成分とした金属の合金で作られています。
銀やニッケルといった金属を銅に混ぜることでシンバルは作られますが、金属の比率によって音は大きく変わるため、一見どのメーカーのシンバルも同じに見えますが、実はシンバル奏者にとっては全く違うのです。
尚、製造方法にも「プレス製法」「鍛造製法」「鋳造製法」といった製法があり、更にはどんな道具を使ってシンバルを作るのかによっても音は変化します。
単純に見えて単純ではない。
シンバルはただの金属の板のように思われがちですが、プロフェッショナルな音を繰り出すために、メーカーや奏者がこれでもかというくらいの工夫が凝らされています。
主なシンバルメーカー
Zildjian(ジルジャン)
SABIAN(セイビアン)
PAiSTe(パイステ)
KOIDE(コイデシンバル) など
ちなみに西洋音楽で使われるシンバルはトルコから広まった歴史があるため、有名シンバルメーカーは大半がトルコのメーカーとなっています。
最後に
たかがシンバル、されどシンバル。
シンバルはヴァイオリン・フルート・トランペットといった人気楽器と比較してしまうと目立たない存在はありますが、実は奥が深い楽器であり、侮りがたい存在です。
もしシンバル奏者を単にシンバルを鳴らしている格下の存在だと思っていたのであれば、その認識は間違っているので、この機会に改めておきましょう!
一撃必殺のプレッシャーは実際体験してみるとガクガクブルブルしてしまうはずです。