ネック製作では木材を少しづつ加工し、細かな調整を行いつつ工芸品としての魅力を高めていきます。
これまでの作業によって「切り取り線の書き込み」は終わっているので、今回はペグの穴を開け、ネックの形に切断・加工をしていきます。
地道な作業が続きますが、この工程で寸法がズレると後の作業にマイナスの影響を与えるので、慎重に作業するようにしましょう。
工程1.ペグの穴あけ
ヴァイオリンのネックには4つのペグ穴が空いています。今回はこの穴を開けることが最初の工程です。
まずは下書きを済ませたネック材を出します。最初から切断に入る方もいますが、この時点でペグの穴を開けておいたほうが後に作業しやすいです。
穴を開ける手段としては「ボール盤」を使って穴を開けます。ボール盤は写真の様な大型の電動工具で、ドリルを高速回転させるによって素材に穴を開けます。
ヴァイオリン製作においてのボール盤の主な役目は、4つのペグの穴を開けることです。
コツとしては一発で貫通させるのではなく、両面からズレない様に穴を開けていき、2回の操作で貫通させます。
つまり2×4の計8回穴あけ作業をします。
では、早速作業スタート。
左手でネック材を抑えて、右手でドリルの昇降を操作。位置をしっかりと確認してから、ドリルを下ろして穴を開けていきます。
この時の注意点は、穴を開けながら「ドリルを上げたり下げたり」することです。ひたすら穴を開け続けると、木屑が絡まって、摩擦によって煙が出ます。
目安としては片側3〜4回上げ下げすると良いでしょう。
半分より少し奥まで穴を開けたら、ネック材をひっくり返し、反対側から穴を開けて貫通させれば1つの穴は完成です。
なお、ドリルの大きさはペグに合うものを使ってください。
ヴァイオリンに関しては「5mm」のドリルを使うのがベターです。
工程2. 切断・面取り
4つのペグ穴を開けたら、次は電動ノコギリを使って前回書いた下書きに沿って切断を行います。
裏板・表板を切断した時のように、線に沿って木材をカットします。比較的切りやすい形なのですが、渦巻き部分の隙間は細かな作業となるため、注意が必要です。
もし、切りすぎる恐れがあるなら、若干多めに木材を残してもOK。
順番としては「ナット〜スクロール内側」→「ネック下側」→「スクロール部分」→「その他」と切っていくのがオススメです。
ペグの穴あけと切断を終えた状態がコチラ。だんだんと完成系が見えてきました!
この工程の締めくくりとして、電動ノコギリの切り口をナイフで面取りします。尚、面取りは残っている線ギリギリまで行ってください。
面取りはネック全体に行う必要はなく、下書きを書く時に最初に書き入れた2本の基準線まで行えばOKです。裏側も2本の線(ナット部分)くらいまでは面取りします。
なお、背面ヘッドの先端となる部分が尖っているので、この時点でカットしておきます。手順はスコヤでカットする部分に線を入れ、カンナもしくは平ノミで削ります。
この際に必要以上に削りすぎないように注意してください。慎重に削れば問題ない工程だと思います。
工程3.ヤスリがけと段差作り
面取りが完了したら、指板とヘッド部分に段差をつけます。段差をつける位置は2重線の上の線です。
もともと1mmの深さの位置に点が入っていると思うので、1mmピッタリを目指してカッターで切り込みを入れます。
その後平ノミで段差を作り、綺麗に整えます。
段差を作り終えたら、ヘッド部分全体にヤスリをかけます。この際、ヘッドを削りすぎない・丸く削らないことを意識してください。
ヤスリが入らない渦巻きの内側などはできる限りで大丈夫です。また、その際は小さなノミや細いヤスリを使ってください。ヘッド部分満遍なく削れましたら、ヤスリがけは終了となります。
工程4.アウトラインの書き込み
ヤスリがけを終えたら、次はヘッド部分のアウトラインを書きこむ作業です。ヴァイオリンは基本的に左右対称の設計となりますので、まずは中央にラインを引きます。
ラインを引く作業なので、ケビキを使います。今回はケビキを中央ラインに合わせ、ヘッド部分全体に中心ラインを引いていきます。
一周引き終えると、上の写真のように中央にラインができます。ここまでの工程で間違った寸法で作業を進めていない限り、そこまで大きなズレは発生しないはずです。
線が引けたら、この中心線を目安に参考書やポスターといった資料を使って点を打っていきます。
資料を見れば目標とする寸法がわかりますので、細かく寸法を測りながらネックに点を打ちます。
また、作業を始める前にペグボックスの広さをナット部分に書き込んでおくと、より丁寧な作業が行えます。
点を打つポイントは厳密には決まってはいませんが、私はヘッドで一番横幅がある根元の部分と、細くなる4本目のペグやや上付近に点を打っています。
なお、左右均等に点を打つためにコンパスを使用するのがオススメです。
頂点に点を打つのは必須です。頂点が12mmの太さになるモデルであれば、6mmにコンパスを合わせて2つの点を打ちます。
もちろん背面にも点を打ちます。渦巻き部分の上下、ペグの4本目、3本目など、随時寸法を測りながら複数の点を打っていきましょう。
最後に丸く膨らんだ部分の横幅の点を打てば点打ちは完了です。
点打ちを終えたら、専用の柔らかい素材でできたテンプレートを使用して、点と点を結んでいきます。全て結び終えた時点で問題がなければ、この線がヘッド部分のアウトラインとなります。
テンプレートは自分で作る他に買ったりすることもできます。
ちなみに無い場合は点を打つ箇所を増やすことで作業を行うことが可能です。テンプレートを使わない場合は各ペグの位置に点を打つのがオススメです。
これで、大まかな形の目安ができました。一見非常に難しく見えるネックの製作ですが、工程を守って丁寧に作っていけば着々と完成へと近づいていきます。次回からはこの線を元に、ヘッド部分を掘り進めていきます。