横板・裏板・表板。ボディの各パーツを一通り製作したら、次はネックの製作です。ネックもボディのパーツと同じく、一つの木からネックの形に作り上げていきます。
この記事ではネック材を加工して、下書きを書き終えるまでの作業を解説していきます。
間違った寸法を書くと完成するネックが歪んでしまうので、丁寧な作業が求められます。
工程1.ネック材を平らにしていく
基本的な作業の流れはボディの各パーツを作った時と同じです。木材をまずは平らにすることから始めます。
ネック材は台形型の長い木材を使いますので、ひとまず直径が長い方を平らにしましょう。
裏板・表板を作った時と同じく、全ての辺が等しく平らになるようカンナで仕上げていきます。
しっかりと平らにできたら、次に目安線を入れます。
ネック材は第一段階として「42mm幅」に削り出していくので、0mm・21mmの中央線・42mmの箇所に線を引きます。(モデルによって幅は異なる)
線が消えないように一度錐で跡をいれてから、ペンで濃くラインを書きます。この際に線が歪んだり、ズレたりしないように気をつけてください。
線を入れた状態がこちら。この線の幅に木材を仕上げていきたいので、書き入れた線を側面にも伸ばしていきます。
スコヤをうまく使えば、平らの面に書き込んだ線を側面に簡単に伸ばすことが可能です。また、側面は鉛筆で書き込むことができない材質なので、しっかりと跡をつけておきます。
ここまで仕上げたら、次はこの42mmラインに合わせて、余分な部分を再びカンナで削る作業をします。
両側面を横幅に合わせて平らにする
線を書き入れたら、天面を平らにした時と同様に、側面に片面ずつ平らにしていきます。
この際、削りすぎて42mm(モデルによる)より細くならないように注意してください。
片面を削り終わったら、反対側も同様に平らに削ります。ネック材によって削る量は異なりますが、基本的には厚みのある面からから優先的に削るようにしましょう。
最終的にスコヤや定規でチェックして完璧に平らならばOK。この作業を適当に行うと寸法が少しづつズレてしまうので、妥協せずに仕上げましょう。
工程2.テンプレートに沿って各種ラインを書き入れる
両側面を平らにしたら、次はネック用のテンプレートに沿ってラインを書き込んでいきます。
ただ単に両面に書き込むだけだと思われがちですが、少しでも両面に差異があると仕上がりもズレてしまうので、意外と神経を使います。
実際に書き込む前に、実際にネックに使用する「向きと切り抜く位置」を決めます。基本的には横板の木目に合わせた向きを選び、切り抜く位置は中央付近にすればよいでしょう。
2本の基準線を書き入れる
ネックに使う位置を決めたら、上の写真位置に2本の線を書き込みきます。このラインは「ナットの幅」に該当し、寸法としては「5.5mm」となります。
テンプレートに合わせながら、まずはこの線を書き入れましょう。
書き入れた2本の線をスコヤをつかって伸ばします。この線が平行に伸びることによって、両側面が同じ位置で交わります。
次に平行に伸ばしたラインをさらに両側面(垂直)に伸ばします。これら全ての工程は絶対にズレない様に細心の注意を払って行ってください。
エンドラインを引く
基準線を入れた終えたら、その線から定規を引き、「136.5mm」ボディ側に離れた位置にもうひとつ平行線を入れます。この線が所謂エンドラインとなり、ネックの端となります。
ナットの幅5.5mm、ナット(エンドライン寄り2本目の線)から136.5mmはヴァイオリン製作の基本寸法となります。明確な意図がない限りは、この寸法を守るようにしてください。
工程3.テンプレートに沿ってネックの形を書き込む
基準線・エンドラインを書き入れたら、ネックの上半分を書き込みます。
この工程のコツは、基準線のヘッド側に1mmラインを入れること。さらに、ヘッドの頂点付近を1.5mm低くすることです。ただ端に合わせるだけではないことに注目しましょう。
1mmの線、1.5mmの線にテンプレートを合わせたら、シャーペンで一気に線を書き込みます。もちろん、ズラしてはいけません。点も含めて全て書き込むまで、一発クリアを狙います。
仮に失敗した場合は消しゴムで消して、再チャレンジです。
無事にテンプレートに沿ってラインが引けたら、スコヤを使って反対面に線を伸ばしていきます。この伸ばした線で「点と点」を結ぶことができたなら、ピッタリ合っているといえます。
なので、反対側にテンプレートラインを書き込む前に、点と点を結ぶ線だけを先に伸ばしておくというわけです。
わかりにくいと思うので、反対面を見てみます。
先ほど書き込んだ面から線が4本伸びていますが、この線は点とうまく重なっています。さらに1mmのラインと1.5mmのラインも書き入れ、ちゃんと一致しているのか確認。合っていればこちらの面もテンプレート通りに書き込みます。
テンプレート上半分が書き終われば、ほとんど完成間近です。
あとは、テンプレートをナット部分(最初に書いた2本の線)とエンドラインに重ねて、下半分を書き写すだけです。
複雑な工程をこなす必要はなく、丁寧になぞれば問題ありません。
ヴァイオリンのネック用のテンプレートは市販品でも構わないので、ない場合は買っておきましょう。
ちなみにテンプレートの寸法は、1mm段差の部分から端まで142mmであることが多いです。(ナット部分5.5m+ネックの長さ135.5mm=142mm)
下書きが完成した状態がコチラ。改めて両面を見比べてみて、ズレがなければOKです。
大事なことなので何回も言いますが、書き込みの精度が悪いと楽器の完成度に大きな影響を与えます。
くれぐれも慎重にラインの書き込みを行ってください。