楽器製作の進捗はInstagram&Twitterにて更新中

【ヴァイオリン製作】弓の毛替え方法を紹介

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

ヴァイオリン弓の毛替えは毎日練習している人であれば半年に1回、趣味でマイペースに弾いている人であれば1年に1回することがおすすめされています。毛替えは弦楽器専門店に来店される最たる理由であり、ヴァイオリンを持っているなら一度は依頼した経験があるのではないでしょうか?
この記事ではヴァイオリン弓の毛替えについて紹介いたします。各パーツがどのようになっているか?どのように毛替えが行われるのか?写真付きで解説したいと思います。
自分で毛替えをしてみたいという人は是非参考にしてみてください。

目次

フロッグを外して弓を分解する

弓の毛替えはそのままではできないため、フロッグを外して弓を分解します。ただ、弓を分解する前に、毛の量を測っておくと良いと思います。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

一般的に毛の量は7~8mmほど、弓を張った状態をイメージしながら計測しましょう。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛の量を測ったら、弓のスクリューをくるくる回して「スクリュー・フロッグ・フェルール・装飾パーツ」を外します。

各種パーツを外したら「毛」を必要な分だけカットします。この際に途中で毛をカットするのではなく、根本からカットするようにしましょう。概ね7mm〜8mm分の量だけ取れば十分ですが、余分にカットしても大丈夫です。
カットしたら剪定(使えない毛を省く作業)を行なってください。
目安しては太すぎる毛や丸まりすぎている毛、細すぎる毛を省きましょう。なお、毛のクオリティーが高ければ高いほど、選定をスムーズに行えます。

専用作業台に弓をセッティング

弓の毛替えには様々な方法があり、使用する機材や道具は人それぞれです。専用の作業台を使用する人もいれば、自作の台座を使ったりバイスで挟んで作業する人もいます。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え
ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛の端を糸で縛る(フロッグ側)

毛替えをする準備が出来たら、まずフロッグ側の毛を端を糸で縛ります。使用する糸は職人によって異なりますが、外れにくく、結びやすい糸を使用すると良いでしょう。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

糸の結び方はフロッグ側であれば5回ほど巻いてからループを作って固結びをします。結ぶ際は片側を歯で挟みながら作業するのが基本ですが、歯が丈夫でない人は別の方法を模索しても大丈夫です。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

外れないように固く糸が結べたら、糸と糸の先端部分に松脂(カケラ)を塗ります。この際に余分な箇所はノミで落としておきましょう。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

松脂を塗れたら糸の端をライター(アルコールランプが理想)で炙って、固めます。この工程を丁寧に行うことで、毛がほつれないようになります。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛の先を固めた状態がコチラ。なお、固める際に毛が無造作に絡まないようにしてください。

フロッグ内部の「くさび」を作る

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

フロッグ側の毛をほどけないように完璧に結べたら、フロッグに毛を入れ込みます。フロッグによって形状は異なりますが、入れ込む方向やフロッグに収納する方法は同じです。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

フロッグに毛の先端を入れ込んだら、毛が抜けないように「木のくさび」を作って棒で打ち込みます。くさびの素材は裏板と同じメイプルを使い、フロッグの形状に合わせて外れないように削ります。
なお、くさびは完璧な長方形ではなく台形です。くさびの端に毛が通るため、フロッグの溝よりも少し小さめに削るのが理想となります。

くさびは綺麗な状態であれば、もともと付いていた素材を流用してもOKです。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

くさびの背面には毛が通るため、ノミで円形に形を整えておきましょう。フロッグに入れ込んだ状態でしっかり固定することができたなら、「フロッグ・フェルール・装飾パーツ」を差し込んで元に戻します。

フェルールに差し込む「くさび」を作る

フロッグに毛を入れ込み「フェルール」を差し込んだら、先をとがらせた木をリングと毛の隙間に入れ込みます。
こちらもフロッグのときに作った「くさび」と同じようにメイプル素材を使用します。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

最初は厚めに作って徐々に隙間に合わせていくとピッタリ合わせることができます。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

差し込む木の形はこのような形を目指して作ります。仕上げとして一度バイスで潰してから隙間に入れ込む職人もいます。

毛の端を糸で縛る(ヘッド側)

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

フェルールに木を差し込んだら、ヘッド側の毛先を結んで固めます。基本的な作業はフロッグ側の毛先と同じですが、ヘッド側を固定する際は以下に気をつけてください。

■台形の穴よりも5mmほど先で結ぶ
■糸を巻く回数は3〜4回ほど
■櫛を使って毛を整えながら作業をする

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛を整える際は少し水で濡らしてから細めの櫛を使って整えます。毛替えをするにあたり、大雑把に整える櫛、細かく整える櫛の2種類を用意しておくと作業しやすいです。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛はフロッグ側からヘッド側に向かって整えていきましょう。また、毛を張った状態をイメージして平らに仕上げておくことが重要です。整えたらヘッドの穴から5mmほど先の位置で毛を結び、松脂を溶かして固めましょう。

ヘッド部分の「くさび」を作る

ヘッド先端の毛を固めたら、台形の穴に合わせた「くさび」を作成します。毛替えにおいては、フェルールに差し込んだ木材を含め、3つのパーツを作ることになります。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

ヘッド部分のくさびは穴に合わせて台形に作ります。フロッグとは異なり「くさび」が剥き出しになるため、出来る限りピッタリ合うように作成するにしましょう。特に毛の折り返し部分は隙間がないように作ってください。
くさびを作ったらフロッグと同様に毛先を穴に差し込んで、くさびを起点に折り返します。

乾燥させて完成

ヘッドに毛先を入れ込み、くさびで固定出来たら毛替えは終了となります。
単純な作業に思えますが、細かなパーツを3つ作る必要があるため、意外に大変です。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

毛替え作業を終えた後は、仕上げとして毛を乾燥させます。
乾燥方法は自然乾燥が基本ですが、引き渡しまで時間が短い場合はドライヤーなどを使っても問題ありません。
一日置く場合は毛を整えてから、弓の中心部分に割り箸の切れ端を当てると綺麗に仕上がります。

ヴァイオリン製作 弓 毛替え

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

可愛いモノや綺麗なモノが好きなアマチュアヴァイオリン製作家。優れたヴァイオリンを一本でも多く作ることを目標に活動中です。
製作工程や音楽に関する記事を更新しています。

目次
閉じる