木は大きく分けて「針葉樹」と「広葉樹」に分類されます。一般的に馴染みのある杉や檜は針葉樹、世界三大銘木であるマホガニー、ウォールナット、チークなどは広葉樹の一つとして扱われます。
この記事では「針葉樹」と「広葉樹」の違いについて解説いたします。
針葉樹と広葉樹の違いは?
針葉樹と広葉樹の最も大きな違いは「葉の形」です。
針葉樹は葉が針のように先端が尖った形をしており、対して広葉樹は葉が平たく広く広がっています。
葉の違いだけでなく幹の伸び方や細胞組織にも違いがあり、同じ「木」であっても全く違う木であることがわかります。
針葉樹について
針葉樹は葉の形だけでなく、幹も真っ直ぐ上に伸びた直線的な木です。細胞組織はその殆どが仮道管で占められており、広葉樹と比較するとシンプルな木の構造となっています。
仮道管:水を根から樹幹を通して葉へ送る通路のこと
針葉樹の木材としての性質は「やわらかく」「軽い」ことです。細胞に多くの空気を含むため、広葉樹に比べて密度が低く柔らかい材質となります。また、針葉樹は繊維が縦方向に並んでいるため、加工がしやすいという特徴があります。
英語では針葉樹をソフトウッドと呼ぶことから、扱いやすく柔らかい木であると覚えておくと良いでしょう。
針葉樹の代表的な樹種
日本で扱われる針葉樹の主な樹種は「スギ」や「ヒノキ」「アカマツ」など。弦楽器の響板として使用される「スプルース」も針葉樹に分類されます。いずれも気乾比重(水と重さを比べた数値)は木材の中でも軽量の分類となり、
広葉樹について
シンプル構造な樹種が多い針葉樹に対して広葉樹は複雑な構造をもちます。仮道管が細胞組織の殆どを占める針葉樹とは異なり、広葉樹は多くの細胞によって組織が構成され、幹は「道管」と呼ばれる水分の通り道と木の強さを担う「木部繊維」によってできています。水の通路である道管は仮道管よりも太く分厚くなっており、粗の肌目が多いことも特徴です。
木目は針葉樹のように真っ直ぐではなく、複雑な模様をしており、高級素材においては視覚的な美しさを楽しむことができます。
ヴァイオリンの裏板に使われるメイプルなどは、その最たる例だと言えるでしょう。
広葉樹の木材としての性質は「固くて重い」こと。大半の広葉樹は空隙率が低い為、材質が固くなります。
空隙率(クウゲキリツ):細胞と空気の隙間の割合のこと。
固くて重い材質であるメリットは耐久性が高く頑丈であることです。英語ではハードウッドと呼ばれており、その性質を利用して主に家具や床材として使われています。逆にデメリットは加工しづらいことです。樹種にもよりますが、針葉樹ほど簡単に加工することはできません。また、塗料が浸透しづらいため、着色の際には工夫が必要となります。
広葉樹の代表的な樹種
日本で扱われる広葉樹の主な樹種は「ケヤキ」や「ミズナラ」「クリ」「クスノキ」など。弦楽器の裏板として使用される「メイプル」も広葉樹に分類されます。楽器製作は表板と裏板で同じ作業を行うことになりますが、裏板の方が加工しづらいのは広葉樹であるメイプルを使っているからです。
森林大国である日本
日本は国土こそ広くはありませんが、森林面積はフィンランドに次ぐ2位となっており、紛れもない森林大国です。
針葉樹と広葉樹の割合はやや針葉樹の方が多くなっていますが、極端な差はありません。
ただ、針葉樹は昭和20年~30年代に拡大造林政策として人工的に植えられた樹種が多く、天然林は広葉樹の方がかなりの割合を占めています。この時代にスギやヒノキといった針葉樹が大量に植えられたからこそ、現在これらの樹種が安く買えるともいえます。(代わりに花粉症に苦しむ人も増えましたが)
用途や予算によって選ぶ樹種は変わる
ざっくり分けると「針葉樹」は扱いやすく柔らかい木、「広葉樹」は加工しづらく固い木となります。価格は材のグレードによっても左右されますが、基本的には針葉樹の方が安く、広葉樹の方が高いです。
ちょっとした道具を作ったり軽量な家具を作りたいなら針葉樹の方が適してますし、しっかりとした家具、美しい家具を求めるのであれば広葉樹の方がよいでしょう。
日本で手に入れられる樹種は実に豊富ですが、種類がありすぎて何を買えばよいかわからない方も多いです。迷ってしまったら、まずは針葉樹なのか広葉樹なのかを気にしてみてはいかがでしょうか?