テンプレート製作の最終工程は本体に取り付けられるメインのテンプレート製作(型枠)の仕上げです。人によって使う素材は異なりますが、私はMDF材を使ってメインテンプレートを完成させます。
テンプレートを1から作ることができれば、あらゆる名器を模倣した作品が作れるようになるため、製作者としての幅が大きく広がります。
今回はその仕上げとしての工程を確認していきましょう!
工程1.MDF材にアウトラインを書き込む
航空ベニアにて2枚のテンプレートを作成したら、それに合わせてMDF材を削ります。
この工程は殆ど機械を使って作成するので、そこまで難しくはありません。
まずは作り上げた2枚のテンプレートをMDF材にセット。ここまでの工程で中心線が描かれていると思いますが、改めてシャーペンで中心線を引きます。
線が引けたら、その上からさらに丸ギリで線を書きます。この線は作業の基準となるため、シッカリと刻んでおきましょう。
中心線を引いた後は2枚あるテンプレートの内側(Cバウツが尖ってる方)だけを重ね、そのアウトラインに沿ってシャーペンでなぞっていきます。テンプレートの側面が綺麗に削れていれば、滑らかなラインが引けるはずです。
中心線と同じく、ここでもペンの上から丸ギリで板を削ります。このラインに沿って電動工具で削り出しを行うので、ブレないように丁寧に引きましょう。
工程2.各種寸法ラインの書き入れ
テンプレートのアウトラインを削り出す前に、各種寸法ラインを書き入れます。
この工程では主に「ブロック材の寸法や位置」「クランプの穴の大きさおよび位置」といった寸法に対する位置の詳細を書きこみます。
位置の詳細は作り手や国によって異りますが、基準となる寸法は確かに存在し、それにそってラインを書き入れていくのが基本です。
まず書き込むのはトップとボトムのブロックの溝。横幅と奥行きのラインをズレがないように書きこみます。このサイズが実際のブロックのサイズとなるため、ミスがあってはいけません。
なお、トップとボトムのブロックはそれぞれ幅が異なります。
トップの方が小さく、ボトムの方が大きいです。
トップ・ボトムのブロック寸法を書き入れたら、アッパーバウツ・ロウアーバウツのCバウツ付近に横一直線のラインを引き、先端部分に写真のようなラインを書き込みます。この部分がCバウツのブロックとなるわけです。
また、その後クランプを嵌める穴を書き込みますが、これに関しては割とアバウトなので、製作者が作業しやすいように考えて位置を書くとよいでしょう。
もちろん穴じゃくて長方形の溝を大きく開けてもOKです。
全て書き終えた状態がこちら。私の場合は丸穴が6つ空いているテンプレートとなっています。丸の位置が微妙に均一ではありませんが、完璧である必要はないので、良しとしましょう。
とはいえ、ブロックの寸法等はアバウトではダメですが。
工程3.電動工具でMDF材をカット
さて、ここまできたらあとはMDF材をカットするだけ。
糸ノコギリやヤスリを使って手動で作り上げるのもアリですが、やっぱり電動工具を使って作業をした方が正確ですし、早いです。
丸穴をボール盤でくり抜く
アウトラインのカットの前にクランプ用の丸穴をボール盤でくり抜きます。丸の直径は好みですが、20mmくらいがちょうど良いです。
くり抜き終えたら、ヤスリでバリを取ることも忘れないようにしましょう。表裏6穴全部のバリが取れたら作業完了です。
電動ノコギリでアウトラインをカット
アウトラインのカットはお馴染みの電動ノコギリ。アウトラインよりも内側を切ってしまったら「終了」なので、細心の注意を払って切りましょう。
側面を平らにする作業も電動で行うため、ラインを割るのが怖い場合は多少余裕を持たせて切って構いません。
切り抜き完了です!
かなりテンプレートっぽくなってきたと思います。
側面をサンダーで整える
アウトラインを切り終えたら、次は側面を平らにする作業です。ヤスリで地道に削るよりも電動サンダーをつかった方が正確で早いので、こちらを使います。
使い方はサンダーと垂直の台を用意し、サンダーを起動させて側面をカットしていきます。
コツとしては少し削らずに滑らかに一回で削ること。
ちょびちょび削ると、側面がガタガタになってしまい綺麗になりません。
MDF材のメインテンプレートはCバウツの先端が尖ったテンプレートとサイズが同一になります。そのため、サンダーの作業中は頻繁にテンプレートをセットし、はみ出している部分がないかチェックすると正確な作業がしやすいです。
もしはみ出ている箇所があればシャーペンで跡を書き、それを消すようにサンダーで削ればいずれテンプレート同士の大きさは一致します。
この工程ではアッパーバウツとロウアーバウツを削ります。Cバウツに関してはサンダーでは削れないため、ボール盤で削ることになります。
Cバウツをボール盤で整える
サンダーでは角度的にCバウツを削れません。
なので、ボール盤に研磨パーツをセットして急な曲線部分を削ります。
最初はアッパーバウツ、ロウアーバウツのCバウツ付近を削ります。要領はサンダーの時と同じで、滑らかに削ることを意識するとよいでしょう。
それが終わったらCバウツの内側。少しづつ削るとガタガタになりやすいので、端から端まで一気に削り進めるのがコツ。うまく削ればヤスリで削るよりもはるかに綺麗に仕上がります。
Cバウツは特にテンプレートのサイズを完璧に一致させておきたいです。サンダーの時と同様に余分な部分はシャーペンで線を書き、完璧に一致するまで削り落としましょう。
平行かつ滑らかな曲線が完成。テンプレートと合わせてピッタリであれば、テンプレートの完成は目前です。
電動ノコギリでブロックの溝を作る
電動工具最後の工程は電動ノコギリでブロックの溝を作ります。この作業に特にコツはなく、削り過ぎないように注意して削るとしか言うことはありません。
トップ、ボトム、Cバウツ×4のブロックを削り落とします。ラインよりも内側を削ってしまうと終了なので、とにかく集中して作業に臨みましょう。
削り終えたらブロックの接着面をナイフやヤスリでカットします。電動ノコギリで綺麗にカットができていれば殆どフラットな状態なので、少し削るだけでOKです。
なお、側面に関しては完璧にフラットである必要はありません。無理に整えようとすると幅が広がる可能性があるので、ほどほどにしておきましょう。
完成
電動工具の工程が多くなりましたが、全ての作業を終えたらテンプレートの完成です。
このテンプレートから次回作のデルジェス Haddockベースのヴァイオリンが出来上がります。
果たして2作目がどんな作品となるのか。その様子も逐一報告しようと思うので、よろしければ是非ご覧ください。
追記:最後にニスも塗っています
テンプレートはMDF材メインテンプレート、航空ベニアテンプレート2枚、ネックテンプレートの4枚ですが、仕上げとして最後にアルコールニスを塗りました。
ニスを塗る理由は見栄えが良くなること、そして耐久性を上げるためです。
テンプレートはこの先たくさんの木クズや黒檀のカス、そして水分や膠を浴びます。そのためニスでコーティングすることで、完成するまで持つタフな耐久性を持たせます。
工程としては各テンプレートを表裏2回ずつ薄く塗る。これだけです。
ただ、以外と綺麗に塗るのが難しく、結構ムラになりました。。ニスを綺麗に塗る技術がまだまだなので、今後精進する必要がありそうです。