バスバーを表板に取り付け、ついに「表板・裏板・横板」の3パーツが完成しました。
そこで今回はこの3つのパーツを接着させ、ボディを作り上げます。接着自体はニカワで行いますが、下準備として多くの工程をこなす必要があるため、意外と時間がかかります。
工程1.裏板と表板の内側エッジを丸くする
ヴァイオリンはエッジが丸くなっているため、この時点で丸く形を整えます。
表面は接着後に行いますが、内側は接着してしまうと作業がしづらいため、このタイミングで行うのがベストです。
工程自体は難しくありません。削りすぎないように豆カンナにて面取りをしてから、ヤスリで丸みが出るように一周削ればOKです。
最終的には表板と裏板の両方を仕上げますが、裏板から始めるのがオススメ。素材が固い裏板でまず慣れるのがよいでしょう。
ヤスリをかける時は上の写真のような角度で削れば、削りすぎることはないと思います。エッジが全体的に滑らかになるように削ります。角度は斜め45度を意識しましょう。
ちなみにCバウツ付近は先の尖ったヤスリを使ったほうがいいです。平らのヤスリを使うと削ってはいけない箇所まで削る可能性があります。
Cバウツの先端はなだらかに形を整えます。角度が急になりすぎるとかっこ悪くなるので注意。製作者によって個性が出やすい箇所なので、理想とする形をよくイメージして整えましょう。
内側のヤスリがけを1周、表板・裏板共に綺麗に仕上げたら完成。表板・裏板の2つはこれで準備完了です。
工程2. 横板のライニングを削る
エッジの調整を終えたら、横板をテンプレートから外すためにライニングをナイフで削っていきます。
削るのはテンプレートに面している箇所。ライニングのテンプレート側半分くらいを一周削れば、横板がテンプレートから外れるようになります。
上の写真は外した時のライニングですが、このくらい削れば外れるので、地道に一周削ります。尚、ブロックに面している部分も削らないと、テンプレートから外れないので注意。
テンプレートと横板を傷つけないように、木目の向きを意識しながら削ってください。慣れてしまえば難しい工程ではありませんが、油断は禁物です。
一周削り終えたらゴムハンマーで衝撃を与えて、ニカワで接着されたテンプレートを外します。各ブロックに添え木をおいてからハンマーで添え木を叩けば簡単に外れるので、6箇所のブロックを叩きましょう。
叩き方のコツとしては、添え木をブロックにしっかりとくっ付けること。そしてゴムハンマーをブロックと並行にして叩くことです。
手首のスナップを効かせて、「トン」と衝撃を与えると、綺麗に外すことができます。
ライニングに削り不足の箇所がなければ、テンプレートが横板から外すことができます。
外す際はアッパーバウツ側の左右Cバウツブロック部分を横に広げ、トップブロックを持って上に引き上げれてください。(ビヨーンと伸ばすイメージ)
外れない場合はライニングを削り、無理なく外れる状態まで工夫するのが良いでしょう。なお、横板は外した時点でかなり「軽く柔らかい」モノとなります。取扱には十分気をつけてください。
ライニングを接着した時にニカワ掃除が不十分だったり、テンプレートを接着する際に石鹸を付け忘れたり(足りない)した場合、中々テンプレートが外れない場合があります。
その場合はテンプレートを叩いたり、ヘラで固まったニカワを壊すことで、外しやすくなります。
ブロック以外の箇所(ライニング部分)をゴムハンマーで叩くと破損の原因になるのでやめましょう。
工程3.ライニングと横板を綺麗に整える
テンプレートを横板から外した後は、ガタガタになっているライニングをナイフで綺麗に整えます。大体の形はテンプレートから外す時に整っているはずなので、ここでは視覚的な仕上がりに拘っていきましょう。
上下のブロックは丸い形にノミで落とします。バキッとブロックを割るとかなり致命的なので気をつけましょう。
Cバウツのブロックも余分に厚い部分を落とします。上下ブロックの時とは違い、カーブのあるノミをつかって少しづつ削ります。形に関しては直線的なデザインorライニングに合わせて少し弧を描く形にするのが定番です。
ライニング及びブロックが一通り削れたら、ヤスリで全体を慣らしていきます。ボディの形にしてしまえば見えないところではありますが、このような箇所こそ仕上がりに拘りをもつべきだと思います。
上下ブロックも綺麗なカマボコ型に仕上げます。凸凹したままで終わらせないようにしましょう!
尚、表板・横板と接着する前にスクレーパーでニカワの跡や汚れを綺麗にクリーニングしておきます。大半の汚れは落ちるはずです。
最後に横板全体を紙ヤスリで整えたら横板の調整は完了です。これで表板・裏板・横板の3パーツの接着準備が整いました。
工程4.裏板と横板の接着
ここからは各種パーツを接着させてヴァイオリンのボディを完成させていきます。
まずは裏板と横板の接着となりますが、その前にブロック部分に薄くニカワを塗ります。
ブロックに薄くニカワの層を作ることで、表板・裏板としっかり接着させることができます。ただ、あくまでも薄く。ニカワの層を作るだけなので、厚すぎると横板と裏板に隙間が空いてしまいます。
ブロックにニカワを塗ったら横板と裏板を合わせ、クランプ類をつかって仮止めしていきます。この際、クランプで裏板を傷つけないようにコルクなどの柔らかい素材をクランプと裏板の間にはさみましょう。
最初はブロックの位置で仮止めをし、その後ズレがないようにチェックしながら一周挟んでいきます。
一周全体はさみ終えた状態がコチラ。横板の接着時と似たような雰囲気になりました。ここからニカワをつけていくのですが、今回は「ヘラ」を使ってニカワを横板と裏板の隙間に滑り込ませます。
クランプを外しながらの作業する
横板と裏板の接着はヘラで横板と裏板の隙間にニカワを入れ込んでの作業です。一周すべてニカワが入り込めばOKですが、あまりヘラをぐいぐい押し込むと横板が傷ついてしまうため、接着面が多いブロック部分だけにヘラを差し込んでニカワを塗るのが基本となります。
そして他の部分は横板の表面にニカワを塗り、横板と裏板をパカパカさせてニカワを流し込みます。
この作業はクランプを少しづつ外しながら、一箇所一箇所順に行っていきます。コツは最初にクランプをとめた位置からズレないように作業すること。ズレたまま接着すると、次の表板を接着する時に表板と裏板が合わなくなります。
工程5.エンドピンの穴あけとラベル貼り
裏板と横板を接着したら、表板を接着する前に「エンドピンの穴をあける」「ラベルを貼る」工程を行います。
エンドピンの穴をあける
接着してしまうと穴があけられないため、この時点でエンドピン用の穴をあけます。工程は実に簡単です。ハンドドリルで中央に穴をあければいいだけ。
ただ、ある程度まで穴をあけたら反対側から貫通させることだけは忘れないでください。一気に片側から貫通させようとすると木が捲れます。
ラベルを貼る
表板で蓋を閉めるまえにラベルも貼ります。ラベルの大きさは決まっていませんが、概ね写真の大きさか、それよりも小さいサイズが無難です。ちなみにラベルには何を書いてもどんなデザインでも構いません。一般的には製作年・場所・作品ナンバーなどが記載されることが多いですね。
貼り方ですが、薄くラベルにニカワをつけて貼り付けるだけ。乾いたら作業終了となります。
工程6. 表板と横板の接着
エンドピンの穴あけ&ラベル貼りを行ったら、次はいよいよ表板を接着します。
主な工程は裏板・横板の接着とほとんど同じです。まずはクランプを使って、裏板と表板の位置があっているかチェック。ある程度合わせてみて、大丈夫そうなら一周クランプで止めます。
なお、表板を接着するときは表板を下にして裏板を上にします。
一周クランプを止めたら、裏板・横板の接着の時と同く「薄めたニカワ」をヘラにて塗り込んでいきます。
表板と裏板は合わそうとしても微妙に合わないため、ある程度押し込みながら位置を合わせる必要性があります。どうしても合わせづらい場合は、ボディを横にして作業を行っても大丈夫です。
作業の仕方は下記の通り。
左手で横板を押し込み、右手でニカワを入れ込み接着させる
この工程の注意点はニカワをたっぷり塗り込みすぎないこと。
裏板と横板の接着時はニカワの掃除を行うことができましたが、完全にボディを密封することになる表板の接着ではニカワを塗り込みすぎるとボディ内にニカワが入り込んでしまいます。確実に接着しつつ、ニカワをはみ出させないことが重要です。
表板を接着させ、問題なくニカワが乾けばボディの完成です。これまで作り上げた「横板・裏板・表板」を一つに合わせることで、楽器らしい立体的な形となりました。
この先は別途製作する「ネック」の完成させ、ボディと接着させることで楽器へと仕上げていきます。
ネックの製作工程も記事として残してあるので、ぜひこちらもご覧ください。
コメント
コメント一覧 (2件)
エンドピン用の穴の径は何ミリくらいにしたか教えてほしいです
φ4mmのドリルで穴あけをして、その後リーマーで穴を広げています。
穴の直径に関しては、差し込み口φ7.0mm〜φ7.5mmくらいが良いとのことです。