ヴァイオリン製作の最初の工程ブロックの製作を終えたら、次は横板の製作に入ります。
前回のブロック製作に続き、またもひたすら「カンナ」で削ったりする作業がメインとなるので、休みながら少しづつ仕上げていきましょう。
カンナで厚みを削る (1.5 〜 1.4mm)
ヴァイオリン製作は厚みにシビアな世界です。厚すぎると音は鳴らなくなり、薄すぎると耐久性が無くなります。
まず最初に材料として購入した横板を出します。おそらく3枚か4枚のセットになっていると思うので、1枚づつ作業台にセットし、厚みを削ります。
作業の進め方ですが、横板をクランプで挟み、カンナで全面均等に削っていきます。最終的には「1.1〜1.3mm」の厚みにしますが、「カンナ」での作業では「1.5~1.4mm」を目指して削っていきます。
ちなみに、実際に横板として使うのは「2.5枚」ほど。薄くしすぎたor割ってしまった箇所が板の端の方であれば、ミスを挽回することはできます。
ちなみにカンナで横板を削る時は刃を櫛刃に代えます。理由としては横板は非常に薄いため、通常の刃を使うと板と刃が引っかかって割れる可能性があるからです。
ギンギンに研いだ刃で作業を行う方もいますが、櫛刃を使ったほうが作業はしやすいと思います。
厚みを計る際はキャリパーと呼ばれる精密測定器が必要です。日本製のモノやドイツ製のモノがあり、高価なモノほど精密な測定が可能となります。横板を削る際は、このキャリパーで逐一厚みをチェックしながら作業を進めます。
最初のうちは頻繁にチェックしないと、薄すぎる箇所を作りやすいので、注意深く厚みを測定しましょう。
横板の厚みは職人によって考え方が異なります。私は「1.2mm」で作ることが多いです。
スクレーパーで厚みを削る(1.1〜1.3mm)
平均的に「1.4mm」に削り出したら、大判のスクレーパーを使い、削り出した面を更に細かく調整をしていきます。この時点で完成系の「1.1〜1.3mm」の厚みに仕上げます。
均一に削っているつもりでも、どこかやたら薄い部分が出てきてしまうことがあります。その場合は削ってはいけない箇所にシャーペンで印を入れておきましょう。(×印などがわかりやすい)
あと0.1mmほどになったら斜線を入れて「削る→線が消える→板が薄くなる」といった手順で細かく厚みを調整します。
最終的に均一な厚みに整えることができたら、作業終了です。
丁寧にスクレーパーをかけると最終的にこのように綺麗な仕上がりになります。この作業を適当に行うとニスを塗るときにムラができやすくなるため、妥協してはいけません。
横板の高さを調整する
厚みを「1.1〜1.3mm」に調整したら、次は横板の高さを調整します。
まずは側面を平らにします。大きなカンナを持っている場合は大カンナを、なければ普通のカンナで作業しましょう。
次は整えた側面を基準にもう一方の側面も平らにします。
工程としてはケビキを「製作するモデルに合わせた横板の厚み」にセット。整えた面をケビキの台座に合わせ、横板に線を刻みます。
なお、横板の高さは目標とする寸法よりも少し余裕を持たせた長さにしておく方が無難です。「30mm」が完成系であれば、「31mm」くらいにしておくと良いでしょう。
横板の高さを決めたらケビキにぴったり横板をくっつけ、ラインを引いていきます。1.1mmの厚みしかないため、何回も同じ箇所にラインを引き続けることで、やがて木材は切り落とされます。
コツは力を入れずに何回も線を引くこと。
力を入れすぎるとラインがガタガタになってしまうので、感覚を頼りに綺麗な線を引ける体勢を工夫してみてください。
切断できたら、こちらの切断面もカンナで平らにして「幅31mm」に調整します。
両側面・厚みが全て均一に整えば、この工程は完了です。
なお、横板は3本使うことになるので、3本とも全く同じ工程を行う必要があります。
1本が1.2mm、もう2本が1.1mmではおかしいので、3本とも全て同じになるように頑張りしょう!
横板の高さは「30mm」が基準ですが、あえて小さくしたりTopとBottomで高さを変えたりすることがあります。基本的にはブロックの高さと横板の高さを合わせるのがベターで、ブロックの厚みが30mmであれば横板も30mmに調整しますし、29mmであれば横板の幅も29mを目指します。
ヴィオラを製作する際の厚み、高さ
ヴィオラを作る場合も作業工程はヴァイオリンと一緒です。横板の厚みを出して、アイロンで曲げて接着します。
相違点としては厚みが「1.2〜1.3mm」とヴァイオリンと比較すると少し厚めになること。アッパーバウツとロウアーバウツで高さが異なることです。
ヴァイオリンの場合はアッパーバウツとロウアーバウツの誤差は±1mm程度ですが、サイズに幅があるヴィオラは±3mmほどの差が生じる場合があります。
明確な基準は存在しませんが、概ね指板側で35mm、ボディ側で38mm前後が目安となります。指板側が高くなり過ぎると日本人の体型では弾きづらい楽器となるため、製作する際はよく考えながら作業しなくてはなりません。
ここまでの工程では「厚みを薄くする」「幅を均一の長さで整える」作業を行いました。
製作者やモデルによって厚みや高さは異なりますが、作業方法は同じです。本数をこなすことで慣れていくので、たくさん数を重ねてレベルアップしましょう。