クラリネットは1枚のリードを振動源として音を出すシングル・リードの楽器で、音域が広いことから様々なジャンルで重宝される万能楽器です。
吹奏楽では花形楽器として君臨し、オーケストラではフルート・オーボエ・ファゴットと並び木管楽器における基本4種の1つとして数えられます。
今回は木管楽器の中でも特に重要なクラリネットについて解説しますので、楽器にある方は是非ご一読ください。
クラリネットってどんな楽器?
クラリネットはブラックのボディーに銀色のキーが無数に配されたスタイリッシュな見た目の楽器です。
本体は「マウスピース」「バレル」「管体」「ベル」の4つに分割することができ、管体は殆ど一定の太さとなっています。
同じ木管楽器であるオーボエと形が似ていますが、「ベル」と呼ばれる楽器の先端がクラリネットの方がラッパのように広がっています。
また、クラリネットは楽器に詳しくない方からすれば地味な印象がありますが、実は木管楽器の中では奏者人口がフルートに次いで多く、かなり人気の高い楽器です。
材質と3つキー・システム
クラリネットは「グラナディア」という木材で作られた楽器です。グラナディアは小さな音でも音量が保てる材質であり、柔らかな音を響かせます。
昔の楽器はツゲが使われる楽器が多かったのですが、クラリネットに求められる音とグラナディアの相性が非常によかったため、現在はグラナディアが主に使われるようになりました。
また、クラリネットには以下のようなキーシステムがあります。
ベーム式(フランス式)・・・1843年にフランスのビュッフェとクローゼという楽器製作家によって作られたクラリネット。ベーム式フルートのキー・システムをとりいれ、誰にでも扱いやすくなっています。
現在の主流はコチラです。
エーラー式(ドイツ式)・・・ベーム式の開発から約60年後に開発された比較的新しいキー・システム。音色の良さに趣が置かれており、豊かな響きを作り出します。
ドイツ国内では市民権を得ていますが、世界的にはまだ普及しているとはいえません。
アルバート式・・・根本的にベーム式やエーラー式と異なる異色のキー・システム。ジャズ等で使われていましたが、現在は殆どつかわれなくなりました。
クラリネットっていつからあるの?
クラリネットは木管楽器の中では比較的歴史が浅い楽器です。
誕生した厳密な時期は定かではありませんが、ドイツ ニュルンベルクの楽器製作者「ヨハン・クリストフ・デンナー」が18世紀初頭に発明したとされています。
また、クラリネットが生まれる以前は「シャリュモー」という低音を得意とする木管楽器が代わりに使われていましたが、シャリュモーを改良して作られたクラリネットが誕生した後はその姿を見かけなくなりました。
クラリネットは同属楽器が多い
クラリネットはクラリネットだけでアンサンブルする機会が多く、同属楽器が多いです。種類が多いからこそ、吹奏楽では花形楽器として扱われます。
クラリネットの主な同属楽器
・ピッコロクラリネット
・ソプラノクラリネット
・テナークラリネット
・アルトクラリネット
・バスクラリネット
・コントラアルトクラリネット
・コントラバスクラリネット
上記以外にも様々なクラリネットが存在しますが、いずれも原則的には同じ運指で演奏することができます。作曲家やプロ奏者を目指すのでなければ、これら全てを把握する必要はありませんので、とりあえずは音域が違うクラリネットがたくさんあるということだけ覚えておきましょう。
一般的なクラリネット=ソプラノ・クラリネット
ちなみに、一般的にクラリネットと呼ばれるのは「ソプラノ・クラリネット」です。オーケストラで使用されるクラリネットもソプラノクラリネットが使われます。
その他のクラリネットとしては「アルト・クラリネット」が吹奏楽でヴィオラ音域を担当し、「バス・クラリネット」が大規模オーケストラで使用されることが多いです。
クラリネットについての知識を本格的に蓄えたいのであれば、とりあえずこの3本について勉強すると良いでしょう。
クラリネットは移調楽器
楽器には楽譜に書かれている音と実音が異なる移調楽器という楽器があり、クラリネットはこれに該当します。
主に使われるクラリネットは「B♭管」と「A管」です。
-移調楽器-
楽譜上の音符と実際出る音が違う楽器。
例えばB♭管(シ♭)の場合、楽譜上の「ド」の音を吹くと、実際はドではなくシ♭が出ます。
作曲家はこの性質を考慮して、他の楽器に合わせて楽譜を書かなければなりません。
オーケストラのスコアを見た時、木管群の中でクラリネットだけ調号が異なっているのはクラリネットだけが移調楽器だからです。
フルート・オーボエ・ファゴットは実音表記のC管、クラリネットはB♭管orA管なので、楽譜上の音が異なります。
ちなみにオーケストラに使われる標準的なクラリネットはA管。吹奏楽で多く用いられるのはB♭管。
ジャンルによって使われるクラリネットが違うことも覚えておきたいポイントです。
クラリネットの音域
クラリネットの音域は中央ド(C3)から下に位置するミ(E2)から4オクターブ弱。かなり音域が広いです。
ただ、クラリネットは音域によって音色感が異なり、同じ楽器であっても別の楽器のように聴こえることがあります。
シャリュモー音域
記譜上の音域でE2〜F3あたりの音をシャリュモー音域と呼びます。
音量が豊かで、ふくよかで美しい良く通る音色を発する音域です。この音域の中でも特に低い音域はどこか怪しい雰囲気を放ちます。
ブリッジ音域
ブリッジ音域(記譜上のG3〜B♭3)とはクラリネットの構造上「魔の音域」とも呼べる厄介な音域です。
シャリュモー音域とクラリオン音域の”橋渡し”として無理やりキーを取り付けた音域であるため、運指が難しく、かつ音量もでません。
そのため、フレーズ内で頻繁にブリッジ音域を行ったりきたりする曲はクラリネット奏者にとっては相当ストレスになります。
クラリオン音域
B3からC5までの音域はクラリオン音域と呼ばれ、最も華やかで明るい音域となります。クラリネットならではの魅力を強く感じることができる音域なので、耳にすることが多いです。
アルティッシモ音域
クラリネットの音域において最も高い音域。ジャズクラリネットではしばしば用いられることがありますが、吹奏楽やオーケストラでは殆ど出てこない音域です。
クラリネットの音色を聴いてみましょう
モーツァルト クラリネット五重奏曲
サン=サーンス クラリネットソナタ
葉加瀬太郎 情熱大陸
ルパン三世のテーマ’78
まとめ
クラリネットは木管楽器においてフルートの次に奏者人口の多い人気楽器です。運指が比較的単純で機動性も高いため、初心者でも取っ付きやすい楽器だといえます。
また、「ソプラノ・クラリネット」「アルト・クラリネット」「バス・クラリネット」など同属楽器が多いことが特徴で、クラリネットだけでアンサンブルを楽しめることも大きな魅力です。